中国風の磁器を作りたい


 ドイツ、ザクセンにあるマイセンという都市は、ヨーロッパで初めて、中国風の「硬質磁器」の作成に成功した町です。以降マイセンの磁器は、現在に至るまで、高級品として人気を博しています。


 硬質磁器とは、陶器などとは違って、真っ白な色に硬い材質が特徴の焼き物です。

 発祥は中国で、特に元の時代(1271〜1368年)に盛んに製造が行われました。磁器にコバルトによって絵付けを行った「青花」は、海外で非常に人気となり、たくさん輸出されています。青花のコレクションは、インド、イラン、トルコといったイスラーム圏のものが有名です。


 そして当時はただの辺境の一地方にしか過ぎなかった西欧でも、中国の文化、特に磁器は、憧れの的でした。


 時代を下って17世紀西欧では、貴族の間で「中国趣味(シノワズリ)」がブームになったこともあり、各地で硬質磁器を作る技術が研究されました。しかし、これが全然うまくいきません。真っ白い色の磁器を焼くのは、とても難しく謎の多い技術でした。

 苦節の末にマイセン磁器が誕生したのは、1708年のことになります。中国では古くから存在する技術なのに、ヨーロッパでは真似るだけで一苦労だったというわけです。


 マイセン磁器が完成すると、今度は青色で絵付けをする技術を真似る研究が始まりました。鮮やかな青の装飾が施された磁器は非常に美しく、またエキゾチックだったからです。これは1739年に技術が完成しました。


 さて、マイセンの初期の絵柄には、やはりシノワズリが採用されました。


 マイセンの代表的な絵柄「ブルーオニオン」はその名の通り青いタマネギの柄ですが、これは中国でザクロを描いたものがタマネギに間違われたのだというのが定説です。ザクロはドイツ人にはあまり馴染みがなかったので、身近なものに置き換わってしまったのですね。


 他にもシノワズリのデザインには、竹や桃や漢字や庭園や鳳凰などを真似た絵柄があります。

 初期のマイセン磁器の絵付けには、どこか可愛らしさを感じますね。


 その後、絵付けの技術が発展して、マイセン磁器には青以外にも様々な色を使った絵柄が描かれるようになりました。しかし中国風のデザインは今なお愛好されており、独特の雰囲気を醸し出しています。

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