第13話 修羅場part1

 修羅場というのは突然訪れるらしい。

 俺の目の前で二人の美少女が笑顔で睨み合っていた。

 

「えっと、お二人さん・・・・・・」


 二人の仲裁に入ろうかと思ったが俺のことなど目に入っていないかのごとく火花を散らしあっている。


「あなた、宗ちゃんとどういう関係なの?」

「それは私が聞きたいんだけど、あなたこそ柏君の何なのよ?」

「私は宗ちゃんの元カノ」

「そう、元カノなのね。なら今は他人と一緒ということね」

「そ、それは・・・・・・そんなことは今はどうでもいいのよ!?あなただって、宗ちゃんの彼氏ってわけじゃないんでしょ!?」

「すぐに彼氏になるんだから!」

「結局、あなただって私と同じ他人じゃない!」

 

 そんなやりとりを教室の真ん中で行っているものだから、もちろんクラスメイトたちの注目を集めまくりだった。

 俺はどんな顔をしていればいいのだろうか。

 さらに二人のやりとりはヒートアップしていった。


「なぁ、これはどういう状況だ?」


 食堂でご飯を食べていたいた渉が教室に戻ってきて言った。


「いや、それは俺が聞きたい・・・・・・」

「まぁ、何となく分かるけどな」


 渉は楽しそうにニヤけて俺と二人を交互に見た。


「な、何だよ・・・・・・」

「いや、モテる男は辛いねぇと思ってな」

「そんなこと言ってないで、何かこの言い争いを止める手立てを考えてくれ」

「そんなの簡単だろ」

「は?どうするんだよ?」

「宗一がどっちか一人を選べばいいんだよ」

「いや、それは・・・・・・」


 選べるわけないだろ・・・・・・。

 そもそも、一人は俺の元カノで、もう一人は・・・・・・。そういえば、俺と響はどんな関係なんだろうか?

 俺がそう思ったところで渉が「まぁ、そうもいかないだろうな」と呟いた。


「仕方ない。貸しだからな」


 渉が二人の間に割って入って何かを言った。

 するとすぐに二人は納得したような顔になり、さっきまでバチバチに散らしてた火花はどこかへ消えていた。

 火花を消した魔法の言葉を二人に吹きかけた渉が俺の元に戻ってきた。


「二人になんて言ったんだよ?」

「それはお前には言えないな」

「は?」

「まぁ、そのうち分かるって」


 二人の言い争いを止めてくれたことには感謝するが、渉のニヤニヤした顔を見て俺は嫌な予感がしていた。

 その嫌な予感が当たったのは放課後のことだった。


☆☆☆

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る