第12話 デートの話し合い

 放課後。

 早速デートの話し合いをしたいと言い出した響と一緒に図書館に訪れていた。


「柏君は私と一緒に行きたい場所ある?」

「行きたい場所ね・・・・・・」

「えー、ないのー?」

「そんなパッとは思いつかないよ」

「私はねー。たくさんあるよ!」


 指を折りながら響は俺と一緒に行きたい場所をあげていった。

 その数は両手では足りなそうだった。


「あー。いくら時間があっても足りないー!柏君と行きたいところたくさんありすぎる!」

「そ、そんなにあるのか?」

「あるある!二年じゃ足りないー!」

「どれだけ俺を振り回すつもり?」

「それはもちろん死ぬまで?」

「拒否させていただきます」

「柏君に拒否権はありません」

「何でだよ!?」


思わず机に手をついて乗り出しそうになった。


「それは、私が柏君のことを好きだから」

「真っ直ぐすぎる・・・・・・」

「真っ直ぐが一番気持ちは伝わるんだよ」

「それは、そうかもだけど・・・・・・」


 響は真っ直ぐすぎる。

 何度も響の好意を無碍にしてるのに一向に諦める気配すらない。

 まるで、俺がいつか自分のことを好きになるって信じて疑わない人のように。

 

「ずっと気になってたんだけど、何でそんなに九条さんは俺のことが、その、好きなの・・・・・・?」

「私が柏君を好きな理由?それはいくつかあるけど・・・・・・」

「いくつもあるんだ・・・・・・」

「あるよー!」


 そう言って響はどれを言おうかなっと悩んでいる様子だった。


「よし!決めた!今日はこれを言う!柏君の好きなところはねー!優しいとこかな!」

「いや、普通だな・・・・・・」

「それが全然普通じゃないんだなー。柏君の優しさは」

「なぁ、聞きたいんだけど。俺、九条さんに好かれるようなこと何かした?」

「薄々そうかなって思ってたけど、やっぱり覚えてないかー。柏君にとっては当たり前の優しさだったんだもんね」


 響は少し寂しそうな顔をして、そんな含みのある言い方をした。

 その言い方からすると俺は響に何かをしてあげたこがあるらしい。

 しかし、俺はそれを思いだすことができなかった。


「ごめん・・・・・・」

「だから、謝らないでって。別に攻めてるわけじゃないし、柏君が覚えてなくても私が覚えてるからなんの問題もなし!」

  

 そう言ってVサインを向けて来た響。

 こんなに真っ直ぐに気持ちを伝えてくれている響からいつまでも逃げ続けていいのだろうか。と俺の心にそんな気持ちが芽生えた。 

 しかし、そう簡単に自信を取り戻せるもんじゃない。簡単に自信を取り戻すことができるのだとしたら、俺はとっくに響と付き合っているだろう。


「柏君。私は柏君のこと何があっても嫌いになんてならないから。だからさ、私に恋してもいいんだよ?」


 耳に髪をかけ微笑んだその顔に俺の心臓はドキッと高鳴った。

 そんな顔をされて惚れない男子がいるだろうか。

 断言する。

 絶対にいない。 

 もう絶対に恋なんかしないと心に誓った俺ですら、この時の響には恋に落ちてしまったのだから。


 

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