第11話 渉の事情聴取

 翌朝、学校に行くと待っていたのは渉からの事情聴取だった。


「えー。それでは、被告。昨日のあったことを包み隠さず話したまえ」

「その話し方やめろ!そして、俺は被告じゃねぇ。何も、悪いことはしてねぇよ」

「いや、宗一は悪いことをした」

「どんな?」

「九条さんをたぶらかした罪だ」

「なんだその罪?」

「まぁ、簡単に言えば九条さんに好かれてるから罰を与えますってことだな」

「何だその理不尽な罪は・・・・・・てか、渉は九条さんのこと好きじゃないって言ってなかったか?」

「ん?別に好きじゃないぞ」

「なら、何でこんなことするんだよ」

「だって、面白いだろ?」


 渉はニッと笑う。

 

「俺は面白いことだったら何でもするぞ」

「そういえば、お前はそう言うやつだったな」

「で、何か進展はあったのか?」

「何もないって、普通にフリーマーケットに一緒に行って本を買って、カフェでご飯して帰ったよ」


 もちろん、あんなラブコメ展開があったことは渉には伏せておいた。


「な〜んだ。つまんねぇの」

「渉が何を期待してるのか知らないが、俺たちはただの友達同士だからな」

「そんな言い方するってことは俺が何を期待してんのか宗一は分かってるんじゃないか?」

「残念だが渉の期待には応えられそうにないよ」

「それは残念だな」

「どうだかな?」

「ないって」

 

 俺がそう言った瞬間、後ろの方から「何がないの?」と声が聞こえてきた。


「あ、九条さん。昨日はどうだった?」

「最高に楽しかったわよ」

「だってさ、宗一。よかったな!」

「うっせぇ」

「さて、お邪魔虫は退散するかな」


 そう言うと渉は自分の席へと戻っていった。

 

「それで何がないの?」


 渉がいなくなって空いた席に響が座った。

  

「何でもないよ」

「ふ〜ん。まぁいいや。ところで、次はどこに行く?」

「次って?」

「もちろん、次のデートに決まってるじゃん!」

「次のデートって・・・・・・俺たち付き合ってないよね?」

「付き合ってないとデートってしたらダメなの?」

「まぁそんなことはないけど・・・・・・」

「じゃあ、いいじゃん!しようよデート!」

 

 ここで頷いてしまったら、この先も響は誘って来そうな気がする。


「ダメかな?昨日の私とのデート楽しくなかった?」

 

 その言い方はずるい・・・・・・。

 そして、その悲しそうな表情も・・・・・・。

 もちろん、昨日のデートがたのしくないわけではなかった。むしろ、ラブコメの話を誰かとすることができて楽しかった。

 俺はどうすればいい・・・・・・?

 どっちの選択をすればいい・・・・・・?


「私は柏君とラブコメの話ができて楽しかったよ」

「はぁ〜。分かったよ。それでどこに行きたいの?」

「え、行ってくれるの?」

「まぁ、その、俺も昨日は楽しかったし・・・・・・」

「柏君ー!!!」

 

 響は席から立ち上がって俺に抱き着こうとした。

 それを察した俺は咄嗟に立ち上がって回避した。

 

「お、おい!流石にそのラブコメ展開は許さないからな!」

「ちぇ〜。どさくさに紛れて抱きつこうと思ったのに〜」


 そんなことされたら俺がクラスの男子どもから殺される。ただでさえ、響と話しているだけでも痛いくらいの視線を浴びているというのに。

 そんな俺の気持ちなど知るよしもない響は俺の席にちょこんと座った。


「いいもん。デートしてくれるって約束してくれたから今後ちゃんはいくらでも訪れるもんね」

「なんか不穏なことが聞こえた気がしたんだが・・・・・・」

「気のせいじゃない?」


 響は上機嫌に立ち上がると「また後でデートの話をしようね」と行って自分の席に戻っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る