第56話 記憶画像

「実は今のは俺の中の記憶の一部なんだ、それをリアルに再現した」



自信たっぷりに言う茂の言葉を合図に、今まで"出る"と噂されいた森がパァと消え、360度画面で出来た部屋が現れる。



東夜は「そういう事か」と呟き、重い足を引きずるようにして立ち上がる。



「あぁ、俺の父親は医者であり科学者でありプログラマーでもある」



やっと思い出した。



そういえば茂は何かにつけて父親の名前を出していた事がある。



カッコつけてタバコを吸いながら父親の話をするので東夜達も妙に感じていた事はある。



「親父がなんだってんだよ、てめぇはどうなんだ」



孝が珍しく喧嘩口調になる。



「俺はもちろん父親と同じさ」



その言葉に東夜はニヤリと笑い「何だっけ? 変態であり鬼畜でありロリコンでもあるんだったか?」と返す。



孝は思わず大声で笑い出してしまった。



茂は軽く舌打し、「俺に逆らうのか」と眉を寄せる。



「逆らうもクソもあるかよ」



「お前はいつもそうだ。俺が一番でないといけないのにそれを横取りしようとする」



「はぁ?」



「お前の事が前から気に食わなかったんだよ! だから、お前の妹だって憎かった」



なんだよそれ。



そんなのただの逆恨みじゃねぇか。



「病院を放火するほどの理由になるのかよ」



「もちろん。親父の名誉を守るため」



反吐がでるような言い訳だな。



でもまぁ、真実を知っておくのは悪くなかったかもしれない。



両親が俺に嘘を突き通せるとも思えないしな。



失ったものは、もう取り戻せない。



前へ進むしかない。



あの不気味な病院の雰囲気やエレベーターの子供は、どうせ茂が驚かせるために跡付けし画像だ。



東夜と孝はチラリと目を見交わして、同時に茂るへ向けてけりをくらわせた。



「ぎゃっ!」とも「ぎょっ!」ともつかない奇怪な言葉を発し、そのまま伸びてしまう茂。




「何だよ、たいした事ねぇじゃん」




東夜はスッきりした表情で笑い、明るくなり始めた空のした、二人は歩いていったのだった。




END



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恐怖短編集 西羽咲 花月 @katsuki03

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ