第23話 おやっ……聖女アーマーの様子が……ッ?!!


 ……そうして、俺は"大聖女"への転職を果たしたのだった……。


 "聖女"から転職できる。

 それは、"武侠"を目指す俺にとって、唯一の希望だった。

 本当に、ただ一つのかけがえのない希望だったのだ……。


 だが、その希望にすがったら、上位互換の"大聖女"への転職することになるとは!

 これでは完全に藪蛇ではないか!

 なぜ、このようなことになるのか!


 屈辱!

 なんたる屈辱!


 まさか、ここまでの恥辱を味わうとは……ッ!

 なぜ、女神様は俺にここまでの試練を与えるのだ!


 もはや、憤死をしてしまいそうなほどに憤っている俺の内心を知る由のない司祭が、祝いの言葉を述べた。

「"大聖女"はSSRの更に上のURですね。この度は誠におめでとうございます」

「黙れ」

 俺は、司祭がそれ以上の言葉を続けることができないように切って捨てた。





 だが、更なる悲劇が俺を襲った。


「な、なんだ……ッ??!!」

 俺のまとっている聖女アーマーの裾が突如としてめくりあがって、俺の身体を包んだのだ。


「い、一体……何が!!!」

 俺は、聖女アーマーに為す術もなく翻弄されてしまう。

 まるで、生き物のように俺を包み、脈打つのだ。


 懸命に腕で振り払おうとするも、衝撃が吸収されて弾かれてしまう。

 いかに拳撃を放とうとも、まったくもって効かない!!!

 


 そのときだった。


「裏返ったァッッ!!!」

 司祭が突如として叫び声をあげた。


(い、一体、何が裏返ったというのだ……?!!)

 司祭の発言の意味がサッパリ分からない。

(た、たしかにウェディングドレスのような裾が裏返ってはいるが……!)

 俺は困惑を極めた。


「素晴らしい! 聖女アーマーが、大聖女アーマーに進化するために裏返ったのです!」

 司祭からの解説台詞が続く。

 視界が塞がれているので、司祭の言葉ぐらいしか状況を教えてくれるものがない。

 しかしながら、いかに解説をされたとしても理解が追い付かない現状に変わりはない。


 どうやら、聖女アーマーは進化するために裏返るという謎の挙動をするようだ。

 もはや全てが意味不明だ!

 俺に何が起こっているのだ!!

 


 その瞬間。

 聖女アーマーが、太陽のように強烈な光を放った!


「こ、これは直視できない……!!!」

 俺は、あまりのまばゆさに目をつぶった。

「オオッ……!!」

 一方、司祭は感嘆の呻きをあげるばかりだ。




 数分ほど過ぎただろうか。


 光がおさまったあとに、俺が目を開けると、そこには驚愕の光景があった。







 なんと、俺はバレリーナの衣装に身を包んでいたのだ。

 









■■あとがき■■

2022.05.07


「テ、テリードリームさん! 実務レベルの担当者を教えてほしい、と当局からメールが……ッ!」

「私の連絡先を教えるよう、当局窓口に回答してください」

 筆者は部下に指示を飛ばした。

 その指示がどのような未来を導くのかは不明だが、ここで動揺してしまってはチーム全体の指揮に影響してしまう。

 筆者は、懸命に冷静を装うのだった。



 しかしながら、Outlookで筆者の連絡先が当局に飛ばされるのを見ながら、筆者は「なんで、こんなことに」と口から漏らしそうになる。

 何とか耐えたが、既に限界に近い。

 

 もはや、炎上すること本能寺の如く、とでも言えばいいのだろうか。


 アンコントローラブル。

 すでに制御不可能なのだ。

 

 超巨大なキャンプファイヤーのように炎上し続けて、燃え尽きて灰になるだけといった感じだ。


 ハハッ。既にハイになっている筆者には関係ないんだがな! ハイハイハーイ!




 ……しかし、その時の筆者は知らなかった。

 そこから更なる苦難に見舞われるということを……。




(今回は、「裏返ったァッッ!!!」がやりたかっただけの回でした)

 

 

 

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