第20話 ……シテ……


「……シテ……」


「……シテ…………コロシテ……」


 俺の口から吐息のように言葉が漏れる。

 まさか、自ら死を望むような日々が訪れるとは……。






「うわぁ!ディスティニーランドのパーター・ピンみたいだぁ!」

「しっ! 声を出しちゃいけません!」

 全身に浴びせられるスポットライトの下、力なく宙づりにされる。

 そんな俺に対して投げられる心ない言葉。

 無邪気な子供の言葉が心をえぐり、たしなめる親の言葉が追い打ちをかけてくる。




「プッ……クククッ……」

「やばい。腹筋崩壊しそう」

 笑いたければ笑え。

 俺だって、他人事だったら絶対に笑う。

 ……だが、お前らの顔は覚えた。後日、絶対にボコる。





「ガチムチにウェディングドレス……。意外と……」

「ああ……有りだよな……」

 えっと。

 誰がどう考えても無しじゃないですかねぇ?

 俺をみながら生唾を飲み込むのを止めてもらえません?





 地獄のようなパレードが終わりを告げるまで、俺は力なく宙につるされたのだった……。


 このパレードさえ終われば、俺の悪夢も終わるはずだ……。



-------------------


 宙釣りが終わった後のことだった。



「わっしょい! わっしょい!」

 なぜか、俺は赤いフンドシを締めた男衆の担ぐ神輿の上で運ばれていた。


 なぜだ。

 なぜ、こうなるのだろうか。

 なぜ、こうも悪夢が続くのだ。


 おもわず遠い目をしながら考えてしまう。

 どのぐらい遠い目かといえば、お笑い芸人●迫が闇営業に関する記者会見を開いたときぐらいといえばよいのだろうか。


「え、えへへっ、えへへへっ」

 自然と笑みがこぼれてきた。

 ひょっとして、俺は壊れてしまったのだろうか?

 さっきから笑いが止まらない。


「せ、聖女さま!」

 傍らに控えるルアナスキー男爵が、俺を正気に戻そうとしているのだろう。

 耳を傾けて、彼が続ける言葉を聞いた。


「聖女親衛隊の敬愛の気持ちを、そこまでお喜びになられるとは……! 聖女さまの力を振りまいてその地域を清める意味合いでの神事にて、まさか笑顔まで振るまわれるとは……。民衆も皆、ありがたがることでしょう」


 だ、だめだ……。

 そのまま俺は壊れた人形のように笑い続けたのだった。


 







■■あとがき■■

2022.03.07

更新に間があいてしまい、申し訳ありません。

常態的に超勤せざるをえないことに加え、病休者1名が退職し、名ばかり管理職が1名異動することになりまして……(欠員補充無し。つまり2減)。

リアル仕事をどう切り盛りすればいいのか、なかなかイメージが持てない日々が続いており、どうしても疲れて寝てしまいます……。

しばらく更新頻度が低下すると思いますが、ご容赦いただけると幸いです。



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そんななか、↓のとおり新作短編公開していますwwwww

お目汚しかと思いますが、未読の方はぜひぜひお読みください。

既にお読みいただき、★や♥まで下さった方には感謝感謝でございます!


婚約破棄からは逃げられない

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