第17話 ウサマは何を思う
「分かりました。謁見します」
そう、"聖女"さまが発言された。
"聖女"さまが式典への出席意向を明らかになさった。
ウサマは、その一報を聞いて、歓喜のあまり身が震えてしまった。
(最大の懸念事項が解決した!)
これほどの喜びを覚えたのは、いつ以来だろうか。
まず、王位についてから最も喜ばしい出来事であることは間違いない。
王……すなわち、"聖女"を歓待する総責任者である彼が恐れていたのは「"聖女"の出席辞退」だった。
世に知られるとおり、聖女保護法では”国家が聖女を尊重しない場合には、死をもって償う”と規定されている。
仮に、"聖女"さまが「出席しない」という意向を示した場合には……つまり、王国が"聖女"さまに認められるほどの尊重を行わなかった場合には……王であるウサマだけでなく、並みいる大貴族が自決せねばならない。
魔人と戦う"聖女"さまに対して、そのぐらいの姿勢を示すのは施政者としては当たり前のことだ。
死をもって償うことを何ら恐れはしないが、ただ、どうしても国政が混乱をしてしまうことは避けられない。
だが、当代の"聖女"さまの慈愛によって、そんな混乱も避けることができた。
なんともありがたいことだ……。
どうしても、"聖女"さまへの感謝の念が起こってきてしまう。
それにしても……女神さまがなぜそのように天職を選ばれたのかは不明だが……当代の"聖女"さまは男だということだ。
男でありながら、聖女アーマーを装着しての式典参加などとは……。
生き恥をも恐れぬ勇猛果敢さ。
思わず"勇者"と呼びたくなってしまいそうだ!
ふと。
少し不安になってきたのだが……。
式典の後に「催し」が予定されていることを"聖女"さまは本当にご存じなのだろうか。
いやいや、式典の後に催しがあることなど社会の常識だ。
フォーマルな式典とは別にフランクに打ち解ける機会を設けるぐらいのこと、誰しもが知っているはず。
いまから頭出しをするなど、蛇足もいいところだ。
あらためて説明する必要などあるはずがない。はははっ。
しかし……まざまざと思い知らされるのは、"聖女"さまの懐の深さよ。
それぐらいの深さがないと、全ての人民を
「ははっ、そういうことか……」
ウサマは気が付いた。
そう。
王族や並みいる大貴族たちも、"聖女"さまによって
まさか、ここまでとは。
これはもはや……懐の深さなどという話は超越している。
「全力で報いてやらんとな……」
これまで、凡庸な王とウサマは評されてきた。
だが、いま、この瞬間こそが。
彼が凡庸から非凡に生まれ変わった瞬間なのであった。
ふってわいた"聖女"輩出国という栄誉。
それに対して、自らの代では大過なくやりすごそうと思っていた。
だが、今になって思えば、"聖女"さまの慈悲に対して、そのような思いで向かうのは失礼極まりない話だ。
王として今まで培った全てをかけて、もてなさねばならぬ。
「さてさて………史上最も"聖女"に愛された王にならんとなぁ」
ウサマは自室で満面の笑みを浮かべながら、式典のスケジュール表に熱をこめた赤書きを始めたのだった。
すぐさま、事務方の作り上げたプランは原型をとどめなくなってしまった……。
彼の思いが、ムーラチッハを更なる悲劇に追い込むことになるとは、まだ誰も知らなかった……。
■■あとがき■■
2022.01.15
おやっ、部下社員Aさんの様子が……。ペラッ。これは……診断書!
~翌日~
部下社員Bさん、どうされましたか?今日は年休取得のはずなのに何故電話を……何ですって?! 身内に不幸?!
~翌日~
X領域の件で経営が急遽報告を求めているですって? Bさん、すぐにデータを……?! ああっ、忌引きで休暇か……。その業務、Bさんしか分からないのに一体どうすれば……。
~翌日~
X領域のデータには、これほどの抽出条件がセットされているのか……。しかし、ここまで条件をセットする必要はないでしょう。全ての条件を外して全体感を見せないと経営報告としては相応しくない。よし、条件を全て外して抽出してみましょう。
~翌日~
ぐああ!なぜだ!数が合わない!しかも、いままで存在を知られていない熟成されたヤバいデータを発見してしまったかもしれない! 庭先だけを綺麗にする仕事をしていたということか!
……みたいなリズム感でイベントが起こりまくって発狂しそう。
育毛剤を飲んでるのに、マッハで髪の毛が減るからヤバい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます