第3話 作戦

 みんなと打ち解けるべく作戦を練る為に、担任の所に行った。

 職員室がざわざわしている。

 きっと、みずきさんが図書室から出てきたからだと思う。

「本当に良いのか?大丈夫なのか?」

 柳田やなぎだこう先生が心配する。

 この人もサバサバだから、嫌なんだけどなぁー。

「はい、覚悟は出来てます」

 そうみずきさんはハッキリと言った。

「そうか・・・でも、無理はするな」

「はい」

「さぁ戻れ戻れ。苦しくなるぞ」

「もう苦しいです、失礼します」

 みずきさんはダッシュで図書室に戻って行った。

 置いてかれた僕と優愛ゆめさとし

「あんた達がまさか彼女を見つけたとはね・・・特に、花にしか興味ない弦大げんたにはビックリだ」

「そんなに?」

「ああ。大雨が降ってもおかしくない」

 失礼な人だなー。

「まぁ、明日の初顔合わせはバックアップする。小園こぞの弓河ゆみかわは頼りになるから安心だが」

「えっ?」

「弦大は・・・期待していない」

 ガックシ。

 お気付きだろうか?

 何故、僕の事だけ呼び捨てかというと、この人いとこなんです。

 母親の妹の娘が先生。

 担任が発表された時に背中がゾワッとしたのを今でも覚えている。

 この人、紅姉ちゃん、僕の事を遊びの中で、相撲で投げ飛ばしたり、プールではいきなり背中を押されて水に強制ダイブ。

 肝試しでとことん僕の事を泣かしに驚かしたり、ゲームは容赦しないし。

 盆と正月に会うのが嫌だった。

 大学生になってからは落ち着いたから良かったけど、今でもトラウマ。

「さて、あとは席なんだが、羽咲はなさきの席は窓側の1番後ろだからな・・・席替えして1ヶ月しか経ってないし・・・困ったな」

「そこは私にお任せを!」

 優愛、何か良いアイデアがあるの?

「そうか、なら任せる!」

「ご期待に添えられるようにやります!」



 翌日。朝早くに僕と優愛と聡は教室にいた。

「まず、みずきの隣は私。それで、みずきの後ろに弦大、私の後ろに聡、どうかしら?」

「配置的に異議なーし!」

 朝から元気良いな聡。

「あとはどかさないと」

「言い方」

「うるさい!」

 怒られた。

 7時半過ぎになると続々とクラスメイト達が教室に入って来た。

 移動してもらうクラスメイトの何人かに優愛が声をかけると、皆言うことを聞いて移動開始。

 あれよあれよと、予定通りの配置になった。

「さあ、弦大!」

「ん?」

「ん?じゃないよ!呼んできて!」

「あっ、ああー」

「間抜けな返事するな!」

 あー怖い怖い。クワバラクワバラ。


「おはようー」

「おはよう弦大君!」

 元気そうで。

「大丈夫?」

「えっ?」

「昨日猛ダッシュで職員室出て行ったから」

「あっ、ああ・・・気にしないで」

 教室に居れない理由の1つなんだろう。

 深掘りしない。

「じゃあ行こ」

「うん」

 なんか震えてない?

 こういう時はどうすれば・・・あっ!

 僕はみずきさんの両手を優しく両手で包む。

「弦大、君・・・」

「大丈夫」

「ふふ、ありがとう」

 みずきさんは微笑んだ。あっ、震えが止まった。

 そっと手を離す。

「じゃあ、今度こそ行こ」

「うん!」

 元気な返事が返ってきて安心した。

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