毎日が特別なこと(塔の正位置)

「主……見て?」

「あれ、これって前に私があげた絵日記? たくさん書いたのね!」

「うん、毎日書くようにしてるの……それでその、いっぱいになっちゃって……」

「そうなんだ! じゃあ新しいやつあげるね」


 人の不幸が見えてしまう体質のタワーさんは、出会った当初と比べるとかなり『見える』ことへの耐性が付いてきた。とはいえ、唐突に人の不幸が映像化されて見えることがあり、その時は耳をふさぎぶるぶると震えたりすることもある。

 そんな彼に、私は日常にある幸せを見つけてもらおうと、絵日記を書く事を勧めていた。小さなことでもいいから、何か一つ幸せだと感じることを書くように言っておいたのだが、どうやら楽しんで続けてくれていたらしい。


「これ、読んでもいいの?」

「うん……下手くそだけど」

「そんなことないよ、すっごく上手に描けてる! あれ……これってもしかしてフクロウさんと遊んだ時の?」


 パラパラとみていた私は、あるページで目をとめた。そこには前回タワー兄弟と一緒に行った、フクロウカフェの時のことが書かれていた。そのカフェは沢山の種類のフクロウとたわむれることができ、人懐っこい子に関しては肩に乗ってきたりもする。


「この時、フクロウさん達が一斉に肩に乗ってきてびっくりしたんだっけ?」

「うん……でもみんな優しかった」

「塔とフクロウって一緒に描かれることが多いから、もしかしたら何か惹かれるものがあったのかもね」


 思えば、帰り際に悲しそうな声で鳴くフクロウに対し、優しい言葉をかけながら別れを惜しんでいた気がする。動物たちとの相性は、抜群にいいのかもしれない。


「そうだ、今度爬虫類カフェとか行ってみる?」

「え……嫌がられたりしないかな……?」

「きっと大丈夫よ、こっちに敵意が無いって伝われば、また仲良くなれると思う」


 少しでも、不幸が見える時間が短くなりますように。そんな願いを心に秘め、出来る限り彼との時間を取るのだった。

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