後書き

 こんにちは。

 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


 私は昔から後書きを読みながら余韻に浸るのが大好きで、すべての小説に後書きがあってほしいと願っているタイプの人間です。なので一応自分も書いておくことにしました。とりとめもない文章ですが、何となく小ネタについて話せればいいなと思います。


 『まだラストダンスは踊らない』は、19世紀フランスを舞台に、裏社交で活躍したドゥミモンデーヌを主題とした歴史小説です。


 サロメ・アントワーヌ(作中でバラノフに改名しますが)は、当時のフランスで活躍した何人ものドゥミモンデーヌを参考に作ったキャラクターです。


 ドゥミモンデーヌは男を陥落し、恋に溺れさせて金をまきあげることになんの躊躇もなく、穏やかな永遠より一時の栄華を求めた女性たち。サロメも例外ではなく、金と名声、それから誇りに生きる女性です。


 物語を展開していくうえで、サロメの苛烈さや狂気をより際立たせるために、彼女とは真逆な、純真で初心で平凡な少女、リザ・ルーセルが生まれ、本作は彼女の視点で進めることになりました。


 この二人は導く者と導かれる者であり、友人であり、恋人のようでもあります。関係性はその時々によって微妙に変化ながら、けれど確かな絆で結ばれているのかなと思います。


 リザはサロメから学んで(なかば強引に)価値観を変化させ、逆に最後にはサロメに新たな価値観を与えていきます。本作のテーマは「価値観のすれ違い」「人生への当事者意識」なので、そういう意味で、二人は成長したのではないでしょうか?


 敵役として立ち塞がるオリヴィエとの違いは、やはり新しい価値観を受け入れようとする気構えなのかなあとも思ったり。



 ここからはちょっとした小ネタです。


・サロメの名前の由来は、ヘロディアの娘サロメから。


・サロメは赤毛ですが、これは赤毛が文化上様々な偏見を持たれてきたり、逆に魅力的なものとして捉えられたり……という歴史をもとに選びました。


・またサロメは灰色の瞳ですが、光の当たり方によって様々な色に見えるのが彼女らしいと思ってこの設定に。


・リザは敬虔なカトリック教徒であった母親の影響を受け、聖書を読んでいますが、これは彼女の清楚なイメージを強化するためです。


・サロメは時々足を組みますが、当時は足首が見えるだけでも色っぽいという価値観からきています。ことある事に色気を見せつけてる。


・途中ちょっとしたキスシーンがあります。サロメ的には挨拶程度。気を引く方法は性的な行為しか知らない。


・リザは下働きとして長く働いてきたこともあり、意外と力持ち。サロメは非力。二人が腕相撲したらサロメは両手でいい勝負。たぶん負ける。


・ジルたちの仕立て屋は、昔技術を気に入ったサロメが金銭的に支援して作った店なので、彼女の無茶な納期にも全面的に応えてくれます。


・オリヴィエには特別な過去があったりするわけではなく、ナチュラルボーン狂人です。


・本編のその後、オリヴィエは普通に訪ねてきて「この間はすみませんでした〜。もう殺す理由がなくなったので、今後困ったことがあったらいつでも俺を頼ってくださいね」とにこにこ笑顔で言ったので、サロメに灰皿を投げつけられる。


・ただ軍との繋がりは欲しい……と考え直したので、(表面上は)割と有意義な付き合いをしてる。


・サロメはオリヴィエがだいっっっっ嫌いですが、オリヴィエはサロメが普通に好きなので意に介していません(そういうところが余計に嫌い)


 以上、小ネタ集でした。



 最後までお付き合いありがとうございました! これからも公開するであろう作品たちもよろしくお願いします。


 (同じく19世紀フランスを舞台にしたファンタジーで、『ルカの証明』という長編も公開しています! こちらでもフランスの歴史や文化をちょくちょく扱っているので是非!)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

まだラストダンスは踊らない 月花 @yuzuki_flower

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ