その25 講演活動とまさかの展開
仕事を再開してしばらく。
時々合間を縫って講演会などに参加していました。
クラブハウスはまだまだ日本では認知度が少なく、積極的に講演活動を行っています。
時折、依頼を受けて活動することもあります。
講演自体は以前から参加し、自分のことやクラブハウスのメリットなどについて語っていました。
義足になってからは、特に熱心に取り組みました。
一人で戦わなくて済んだことの安堵感。
もし、精神障害を持っていて、自分が今ひとりぼっちだと思っているのなら、なんらかの支援機関に参加することで変わることがある、ということ。
支援者の方への啓発などなど。
一番印象的だったのはピアヘルパーの講座の講演にいったときです。
ピアヘルパーの「ピア」は英語では「Peer」。
「仲間」という意味です。
ヘルパー自体は皆さんご存知のとおり、生活援助をする人のことです。
今回の場合の「ピアヘルパー」は、精神疾患を持っている人が同じく精神疾患を持っている人の生活援助をすることです。
同じ病気を持っているからこそ相手の気持ちを理解できますし、ピアヘルパー自体も自分の経験を活かせ、また収入を得ることができるというメリットがあります。
その中で「なぜピアヘルパー」なのか、というお話をさせていただきました。
その15で書いたとおり、「ありがとう」の言葉には大きな力があります。
支援をして「ありがとう」と言ってもらえたら嬉しいですよね。
また、支援をしてもらって「ありがとう」と言えるのも当事者の方にはひとつの力となっていきます。
「ありがとう」の言葉が支援者、要支援者の間で積み重なり、お互いの力となっていくのではないか、という内容を話しました。
ここで少し話を戻します。
先ほども書いたとおり、クラブハウスは認知度が低いです。
その一方で「うちの施設もクラブハウス方式を取り入れたい」という施設も増えてきました。
しかし、クラブハウスのシステムは従来の日本の支援機関と大きく異なる部分があります。
そのため、理解してもらえるための勉強会が必要になってきます。
ある日、クラブハウスへ行ったところ、施設長さんからアメリカのセントルイスでクラブハウスの勉強会があるから一緒に行かないか、と声をかけられました。
日本で勉強会を行うための参考と資料の入手が目的です。
ア、アメリカっすか!?ていうか、セントルイスってどの辺だっけ??
どうしようか一瞬迷ったのですが、生命保険で入ってきたお金が大量にあります。
思い切って行ってみる事にしました。
また数日後のこと。
その20で書いたクラブハウスの方より、セントルイスにくるならニューヨークでクラブハウスの講演を行うので私の体験を話してもらえないか、との依頼を頂きました。
アメリカは寄付の文化が多く、今回の講演も寄付集めが目的です。
思わぬ展開でしたが、私の体験がお役に立てるのなら、とお受けしました。
退院してまだ4ヶ月目。
まだ長く歩くには杖が必要な状態です。
――本当に大丈夫だろうか
多少の不安と大きな期待感を持ち、アメリカ出発の日を心待ちにしていました。
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