第33話

✳︎ほんのりRが入ります。ご注意下さい✳︎



 翌朝目覚めると、待ってましたと言わんばかりにメイジー率いる侍女達に王宮への馬車に押し込められ、王宮教会の新婦用の部屋で磨き上げられた。


どうやら突然の式にも関わらず許可が出たようだ。上位貴族の憧れである王宮の教会での結婚式。王族や上位貴族しか使われないため許可はすぐに下りたらしい。王家としても昨日の出来事を見て不測の事態も考えられると判断したのかもしれないわね。


私が部屋を出た後すぐにお義父様は侯爵家へ到着し、父と話し合いをしていたらしい。


 お義母様は私を着飾りたかったらしく、時間が無い事に怒っていたみたい。披露宴はお義母様とお母様2人の主導で行う事で納得したようだ。


 ニール様のお母様と私のお母様は元々派閥が同じで仲良しだったみたい。あーだこーだと言いながら着せ替えさせられるのだろうなと今から思ってしまう。


「お嬢様、準備が出来ました」


メイジーの言葉に意識を戻す。お母様もメイジーも目を真っ赤にしているわ。鏡で見た私は本当に幸せそう。嬉しい。偽りの結婚では無くて、本当に愛されて結婚する。


「お母様、私は幸せになっていいの?もう、良いのかな?」


涙が目一杯に溜まっていく。


「リア、簡易な結婚式でごめんね。でも、ようやく掴んだ幸せなのよ。離しちゃだめよ?」


お母様は私の涙をそっと拭いて抱きしめてくれた。


「お時間です」


急いで行った式とは言え、王宮の教会はとても素敵だったし、家族だけで行った式も私には合っていたのだと思う。ニール様のお兄様達には急がせて申し訳無かったけれど。



 普通は教会神父が婚姻を取り行うのだけれど、何故か陛下が神父の格好で現れたのは私も周りも驚いた。国一番の王宮魔導師とその見習い。そして高位貴族であるのにも拘らず結婚式がこんなにも質素なのは忍びないと陛下なりの気遣いだったみたい。


感激してまた涙が出てしまった。ニール様に涙を拭われつつ2人で署名し、晴れて夫婦となった。


 式場を出るとモーラ医務官や私が治療してきた騎士達が集まり、フラワーシャワーをしてくれて涙で前が見えなくなってしまった程。急に決まった結婚式なのに集まってくれた人々に涙が止まらないわ。


私は幸せ者だと本当に思う。


あまりに涙するもんだからニール様は前が見えないでしょう?と途中からお姫様抱っこで馬車前まで歩いてくれたの。


 本来なら新居へそのまま向かうけれど、まだ内装も防犯面でも工事の途中なので暫くは侯爵家の私の部屋に住む事になった。


1ヶ月は侯爵家で過ごしてから新居にお引越し予定。


 明日からまた仕事、と思いきや、やはり新婚だし、今は魔物も落ち着いているそうなのでニール様は2週間程休みをもぎ取ってくれたみたい。




 ニール様と迎える初夜。いつの間にかメイジーが用意してくれたネグリジェは、レースの見えるか見えないかという際どい物だった。


はっ、恥ずかし過ぎよ!


 私は上にショールを羽織ってニール様にこのネグリジェが見えないようにしてお酒を2人で飲んだ。ニール様に手を引かれてベッドへ向かった時にパサリとショールが床に落ち、ニール様と目が合った。ニール様は私のネグリジェを見てふふっと妖艶な笑みを浮かべてキスを落とす。


「リア、怖いかもしれないが大丈夫。私も初めてですが」


そうよね!?少し前まで魔法オタクでご令嬢から見向きもされていなかったんだもの。


「本来ならもう少しリアが大人になるまで待つつもりでしたが、状況が状況だからね。でもリアを今からじっくりと堪能出来ると思うと男冥利に尽きるよ」


そう言いながら深いキスをする。


ニール様との夜は、甘くて凄かった。その一言です。


 元々研究者気質のようで優しく撫で上げたり吸い付いてみたりと私の反応を見ながら気持ちよくさせてくれた。


思い出しただけでも恥ずかしくて顔から火が出そう。一晩中抱かれて眠ったのは朝方。ニール様の腕の中で眠りについた。抱かれて眠る心地よさや寝息に安心して目を瞑る。



 こうして私達は三日三晩の甘い時間を過ごしてからようやく部屋を出て毎日2人でデートを楽しんだの。オペラやピクニック、街へデート等。蜜月をたっぷり堪能したわ。


お母様は苦笑しながらも受け入れてくれたけれど、ニール様のお母様は披露宴のためのドレスを着せ替えしたいから部屋から出てこいとせっつかれたわ。


 それからは私達は披露宴の準備と新居の工事に時間を割く事になった。ニール様はずっと私に寄り添ってくれるので私は嬉しいけれど、お義母様はただでさえむさ苦しいのに四六時中一緒なんて暑苦しい、早くリアちゃんを明け渡しなさいと言われていた。


そのやりとりに男の方の親ってこんなにドライなんだと感心してしまった。


「そうそう、貴方達が新婚生活を満喫している間にアイラ夫人の罪が確定したようよ?知らせが来ていたわ。侯爵令嬢への傷害。光属性の令嬢への自殺教唆、公爵夫人位の簒奪。娘を使った王妃位の簒奪未遂という罪名が付いていたわ。リアちゃんは当事者だから王宮に呼ばれるかも知れないわ」


・・・簒奪。極刑だわ。


お義母様の言葉に息を呑んだ私。動けずにいるとニール様の腕に包まれてホッとする。

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