第25話

「ええ。良いと思います。アベル、このドラゴンを氷漬けにして下さい」


「ええー。やっぱり持って帰んの?お前のドラゴン熱が冷めるのは後何年後だろうな。もう、仕方ないなぁ」


そう言うとサウラン副団長は魔法を唱えて宙に浮いているドラゴンを氷漬けにした。


「サウラン副団長は魔法も凄いのですね」


「そうなんだ!僕は水属性しか使えないんだけどね」


そう言いながら剣を鞘にしまう。私は魔溜まりを浄化しながら歩き、サウラン副隊長は護衛として後ろを付いて歩き、ニール師団長は1番後ろで風魔法を使い、ドラゴンを浮かせて上機嫌で歩いていた。


私達はようやく浄化が終わり村に帰った。


ニール師団長は村長に話があると村長の家に行ってしまった。私とサウラン副団長は疲れたとばかりに宿に戻り、部屋で休憩する事にした。


「メイジー、今日は疲れたわ。視察だけだと思っていたのに土地の浄化とドラゴン退治もしたの」


「お嬢様、お疲れ様でございます。すぐにお風呂に致しましょう。マッサージもしますね。疲労は肌に良くないですからね」


 私はメイジーの言われるがまま日の高いうちからお風呂に入り、髪を拭いてもらっていると扉をノックする音がする。メイジーに出て貰うとそこにニール師団長が立っていた。


「さあ、リア。帰るよ。準備をして」


「えっと、ニール師団長。私、まだ髪が濡れているのですが?」


服は簡素なワンピースだったので人前でも恥ずかしくはないが、お風呂から上がったばかりで男の人に会うのは恥ずかしいものがある。


けれど、ニール師団長はツカツカと私の元へ来ると、髪を触り始める。


「これはこれでリアは可愛いけれど。流石にアランには見せたくない。・・・よし、これで帰れる。すぐに用意を」


どうやら風と火魔法で髪を瞬時に乾かしたらしい。


どうせ、凍ったドラゴンが気になって仕方がないんですよね。泣く泣くメイジーに出発の準備をしてもらい、馬車に乗り込む。サウラン副団長もぶつぶつと不機嫌に呟いているけれど、結局ニール師団長の我儘に付き合っている。


なんだかんだで仲が良いのね。


勿論ドラゴンは馬車の上部に括り付けています。



 馬車が王宮に着いたのは深夜。流石に皆クタクタになっていたわ。サウラン副団長は途中、何度かドラゴンの氷漬けが溶けないように魔法を使っていたみたい。


「リア、今日は遅くなってしまいました。王宮の一室をお願いしてありますので侍女と泊まるように。明日は視察の報告書だけなので午後からの出勤でいいです」


「分かりました」


王宮侍女に案内されたのは素敵な一室。メイジーと共に泊まるらしい。王宮の警備は万全だけれど、何かあるといけないのだそう。


「メイジー、疲れたー」


 私は自分自身とメイジーにヒールと清浄魔法を掛けてベッドで気絶。メイジーもすぐ寝たらしい。いつもより少し遅い時間の起床。私は王宮の侍女にお風呂に連れて行かれた。


 メイジーは侍女なので一人でゆっくり入ったらしい。良いなあ。髪の毛を乾かし、お昼には少し早い朝食兼昼食を頂こうとメイジーと共に部屋を出た時、王宮の侍女にこちらです、と強制的に案内される。


連れてこられた中庭にはティーセットと共にアラン殿下が座っていらっしゃる。私、お腹が空いているのですが。


そんな言葉をグッと堪えてアラン殿下に礼をする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る