ストーリー28~30

ストーリー28:グランの辛い過去


登場人物

グラン、シャルル=ジョリー、スカーレット(写真のみ)



 グラン=ジョリーは、度重なる演習の疲れを癒す為、郊外の別荘で休暇中であった。

 別荘、というより実家と言った方がいいかも知れない。


 グランの祖母、スカーレットの研究室があった邸宅で、グランが幼い頃まで住んでいた所でもあった。

 グランは休暇の度に、この地へやってきては時間を忘れ、過ごすのであった。


 暖炉の前、ロッキングチェアでくつろぐグラン。


 回想シーンへfade-out、fade-in。


 地球上、二大大国の戦争。一部は敗戦後の反逆軍となっている。この時、世界中を多くの大火が襲い、人口が半減した戦争である。主な施設は空襲に襲われた。


 グランの母親、シャルル=ジョリーはグラン少年と共に戦火に見舞われた。



 シャルル=ジョリー「このままここに居たらこの子まで危なくなる。逃げなきゃ。」

 グラン少年の手を引き逃げるシャルル。


 邸宅の周囲に迫る火災。空には多くの戦闘機が飛んでいる。


 迫る火の手にシャルルが手を向ける。

バリアの様な壁で火の手が跳ね返される……が再び火の手が襲う。


 邸宅の側にうずくまる少年グラン。

何度も、何度も火に手を向け跳ね返すシャルル。


 流れ弾か狙われてかは分からないが、近くに戦闘機のミサイルが着弾、爆発。爆風に飛ばされるシャルル。


 シャルル「グラーン。危なーいっ!」

グランに手を向けるシャルル。グランをドーム状に包み込むシャルルのバリア。


 更にミサイルが着弾。

傷を負ってしまったシャルル、グランの元に駆け寄る。


 シャルル「グラン、大丈夫?怪我は無い?」

少年グラン「お母さん、僕は平気だよ。お母さんがいるもん。」


 ミサイルの着弾音が続いている。


 シャルル「グラン、よく聞いて。あなたは……。あなたには特別な力があるの。そのうちきっとあなたを助けてくれる。……その時が来たら、あなたの周りの人を守るのよ。」


 グランは小さく頷いた。


 更にミサイル着弾。


 シャルル「うわぁぁぁぁ。」


 吹き飛ばされると同時にグランにバリア状のシールドが掛かる。


 遠くに飛ばされるシャルル、グランに向け手をかざしている。farrow-pan。


 地面に叩きつけられるシャルル。身体中焼けただれてしまっていた。それはもう息が無いと分かる。


 グランに掛かっていたドーム状のシールドが徐々に消えていく画まででディゾルプ。


 ロッキングチェアのグランに画が戻る。


 グラン「母さん……。」

グランの手に紋章のペンダント。


 シャルルoff「……あなたには特別な力があるの。そのうちきっとあなたを助けてくれる……。」


 グラン独り言off「以前の戦闘で同僚を助けたのに、俺は片目を失った……。俺には母さんの言っていた特別な力なんて……。どんな力かも分からない……。祖母は人並み以上の長生きだった。それは特別と言えば特別だが……。母さんは……確かに特別な能力があったんだろう……。あのとき、助けてくれたのは母さんが作ったシールドのお陰。母さんはシールドで火の手から守ってくれてた。それまでは普通の女性だった。何故隠していたのだろう……何故俺に知られたくなかったのだろうか⁉︎……。」


 暖炉の薪が時折パチパチと弾けて火の粉が舞う。


 グラン独り言off「俺には……そんな特別な力なんてあるわけが無い。全く自覚も無い!……周りの人を守るなんて、……自分を守る事で精一杯だよ、母さん。」


 暖炉の薪が時折パチパチと弾けて火の粉が舞っている画再び。


 回想……ミサイルの着弾音、そして、

回想のシャルル「グラン、よく聞いて。あなたは……。あなたには特別な力があるの。そのうちきっとあなたを助けてくれる。その時が来たら、あなたの周りの人を守るのよ。」続く着弾音、ディゾルプ


 暖炉の薪が弾けて大きめの火の粉がグランの顔に向かって飛ぶ。


 グランの見た目の画。

 飛んで来た火の粉、一瞬止まる。避けるグラン。


 床に落ちた火の粉、やんわりと炭に変わっていく。

 グラン、ハッとして、

グランoff「火の粉が……止まって見えた。避けられた。……そういえば……侵略者との戦闘中にはビームを何度も避けられた。……もしかしたらそれも止まって見えていたのだろうか……。これが俺の特別な力なのか⁉︎……。」

 自問自答するグラン。


 グランoff「ここへ来れば何か分かるのだろうと度々足を運んでいる。……俺の特別な力……。フフッ、自覚出来ればその力も味方になろう。……そうだよな、母さん。」


 暖炉の上の写真。スカーレットと若い頃のシャルル。小さな宝石箱。その隣には、少年グランとシャルルの写真が飾ってあった。



ストーリー29:ルイスの親友


登場人物

ラムル、ルイス、ジャン、ガルシア=オフェイル



 フローター内、コクピットのラムルとルイス。後部座席にジャンもいる。


 ラムル「母上?どこまで行くの?」

ルイス「しばらく飛ぶわ。場所はエンジャーよ。私の親友が住んでいるの。しばらく滞在させてもらう事になったわ。ゆっくりするには良い所よ。」


 画面はフローターからの見た目。


 赤茶けた大地の所々に緑が見える。何本か川も通り過ぎる。


 やがて遠くにエンジャー=ガル都市部が見えてきた。


 画はそのまま。ルイスoff「そろそろ着くわよラムル。」


 シートで寝ているラムルに画面が変わる。目を覚ますラムル。

ラムル「ごめんなさい、寝ちゃったわ。」


 少し画が引いてコクピットの2人の後ろ姿。


 ルイスoffで「都市部を抜けたら親友の家よ。フローターに連絡するよう言ってあるからもうじき届くわ。」


 そのまま継続の画。景色が流れている。


 画面は変わり、フローターのモニターに通信が入ってきた。


 ガルシア=オフェイルoff「ルイス?私よ。フローターのIDを送って。案内するわ。」

ルイス「ガルシア、久しぶり。分かった、今送るわ。」

ラムル「IDを送ればいいのね?私やるわ。」


 フローターは所有者か利用者の音声認識機能が備わっている。


 ラムル、シートを起こして、「着信元へID送信お願い。」


 送信中の画の後、

ガルシア「受け取ったわ。ここまで案内するわね。」


 エンジャー=ガルを抜けて行くフローター。

 小さくなるまでfarrow。


 ガルシア=オフェイルの邸宅、駐機場にフローターが着陸する。


 フローターから出てくるラムルとルイス、そしてジャン。


 手前からガルシアが迎えに来た。


 ガルシア「久しぶりね、ルイス。元気だった?」

ルイス「ええ、私は相変わらずよ。ラムル、こちらはガルシア。ガルシア=オフェイル、私の親友よ。」

ラムル「はじめまして、ガルシアさん。娘のラムルです。」

ガルシア「はじめまして、ラムル。ゆっくりしていってね。」

ルイス「ガルシア、少しの間、お世話になるわね。」

ガルシア「ええ、遠慮しないでー。」


 オフェイル邸入口前。


 ガルシア「さあ入ってー。あら?そのAnnは?」


 歩きながらの全員。


 ルイス「ラムルのAnnよ。」

ラムル「はい、ジャンっていいます。ジャン、こちら母上の親友のガルシア=オフェイルさん。」

ジャン「はじめまして、ガルシア=オフェイル様。」

ガルシア「そんなにかしこまらなくていいわジャン。ガルシアでいいわ。」

ジャン「かしこまりました、ガルシア様。」

ガルシア「お行儀が良いのねジャン。よろしくね。」


 リビングのテーブルを囲む3人と側に待機モードのジャン。


 画面転換。



ストーリー30:ラムルの隠し事


登場人物

ガルシア、ルイス、ラムル、ジャン



 ガルシア=オフェイル邸、リビングでは幼馴染の再会で盛り上がりながらのディナーの最中。


 ガルシア「大した料理ではないけど、どう?ラムル?」

ラムル「美味しく頂いてます、ガルシアさん。」

ルイス「昔は私達、料理の”り”の字も無かったものね。」

ガルシア「そうそう。ぜーんぶAnn任せ。それにあちこち飛び回っていたわよね。」


 ガルシアは身を乗り出し、ラムルに小声で、

ガルシア「昔は私とルイスはノアーナじゃ札付きのおてんば娘だったのよ。」

ルイス「ガルシア、やめてよそんな昔話。」

ラムル「へー、そんな話があるならずっとここで聞いていてもいいわ。」

ルイス「ラムル、ガルシアをのせないで。ガルシアも程々にしないと怒るわよ。」


 ラムルは、今まで見てきた母ルイスからは想像出来ない姿を知り、微笑んだ。


 ルイス「ガルシア、ここへ来たのは昔話をしに来たんじゃなくてよ。」

ラムル「昨日私が父上の宇宙船のパーツの話をしていて、母上が急に明日出掛けるって。それでガルシアさんのところへ伺った次第なんです。」


 テーブルを片付けながら、

ガルシア「それがいきなり来る事になった経緯いきさつ?。いいわ、片付けてデザートでも食べながら聞くわねラムル。」


 側で待機モードのジャンもいた訳だが、ガルシアはジャンの様子に気付いていた。


 デザートに飲み物を用意しているガルシア。


 座りながら、

ガルシア「ジャン、もっとテーブルの側へ来ていいのよ。それのが音声メモリーしやすいでしょ?」

ルイス「ラムル⁉︎、ジャンにメモリーさせてるの?」

ラムル「ごめんなさい、母上、ガルシアさん。大事な情報が有ったらジャンに解析してもらうつもりだったの。」


 ガルシア「ねぇラムル。奥の部屋の本はどう?欲しい情報が有るかも知れないわよ。探すのに苦労はするけどね。」

ルイス「ガルシアはそれはそれは本の虫でね。だから知識は相当なもんよ。歴史からメカまで。ねガルシア?」

ガルシア「自分で船を作りたかっただけよ。その知識だけ。」

ラムル「私の親友のバンズも凄腕のメカニックなの。ジャンのカスタマイズもしてもらったわ。ガルシアさんもメカニック?」

ガルシア「そうね、バンズって子には及ばないと思うわ。それはそうと……ルイスは知らないかも知れないけど、私が引き取った宇宙船のパーツ。多分……ラムルはそれが知りたいんだわ。そうよねラムル。」


 ラムル、言い出しにくそうにしていて口を開かない。


 ガルシア「ルイスが口外しない約束なら、ラムルも話が出来ると思うわよ。」

ルイス「私はラムルの話を口外する気はないわよ。だからこそあなたに会いに来たんだし。」

ガルシア「ラムル、お母さんの事は信じていいと思うわ、もちろん私も。2人共ラムルの味方、協力するわよ。さ、話を進めましょ。ジャンはそのままメモリー続けていいわよ。」


 ラムル「父上の宇宙船のパーツ、調べてみたくて。母上に尋ねると解体して残っていない、一部の予備パーツをガルシアさんが引き取っているんですってね。」

ガルシア「ええ、当時私の宇宙船に合うパーツも有るだろうと思ってね。コンテナ一杯だったから随分助かったの。」

ラムル「実は私、ダイム金属の事を知りたくて。父上の宇宙船ふねには使われていたんじゃないかと思って。」

ルイス「ダイム?それは何?ブロントの宇宙船ふねに使われていた物なの?」

ラムル「特殊な、軽量化された超硬金属よ。」

ガルシア「ラムル、どうしてそれを?」

ラムル「さっき話した友人のバンズが、古い宇宙船の外装に使ったら軽くて頑丈になると。別の友達が持つ宇宙船を変えるにはそれが有ればねって話になって、そこでダイムの事を知ったの。でも容易に作り出せる物ではないから無理だと。私、その時思ったの。父上の宇宙船ふね、ダイム金属を使ってなかったかって。データが取れれば何とかなるかなって。それでパーツでもいいから、と思い母上に聞いてみたの。」

 ルイスにはダイムなどという話は全く知らなかった。


 ルイス「ガルシア、そのダイムってのを知っててパーツを引き取ったの?」

ガルシア「それは違う。でもダイムの事は最近知った。ダイム金属といって、ビブレスの闇ルートで高値で取引されるらしいが手に入れる事は不可能に近い。ノアーナ対策軍の宇宙船用にしか作られていないらしいんだよ。」

ルイス「そうなの……。それで?ラムルはそのダイム金属を使って宇宙船ふねをリメイクすると?でもあなたにはカーラントがあるじゃない。」

ラムル「カーラントは父上に乗るなと。宇宙そらへ出る事を禁じられたわ。だから別の宇宙船ふねをリメイクすれば、水の惑星ほしまで何度も行き来出来る。色々調査して、平和で安泰な水の惑星を父上に見せたいから……。」

ルイス「それがラムルの隠し事の一つね。」


 立ち上がりラムルの横に来るガルシア。


 ガルシア「水の惑星ほしねぇ。このノアーナだって、遠くから見ると薄っすら青く見えるわよ。ね、ルイス。」


 ルイスを見てイタズラに微笑むガルシア。 ルイス、慌てて返事する。


 ルイス「え、ええ。そうね。ノアーナも…綺麗に見えるわ。遠くからならもっと……ね。」

ガルシア「ルイス。そのダイム金属を作る為に必要な化合物質、分かる?実はそれは、昔私達がよく出掛けていった所に有るのよ。」

ルイス「昔?よく行った⁉︎……リターナ⁉︎まさかリターナに?」

ガルシア「そう。その物質はザクラートという。でも今はもう発見されていない。この物質を元の金属にごく微量化合するだけでダイム金属が出来上がる。それが昔リターナに有ったらしいわ。……ラムルはリターナの戦役は知っているわね。」


 うなずくラムル。


 続けて、ガルシア「もしかすると、G15はそれ目当てだったのかもってビブレスでは有名な都市伝説よ。」

ラムル「ガルシアさん、ちょっと見て。」


 立ち上がりジャンの側に寄るラムル。

ラムル「ジャン、リターナの画像リストを投影して。」

ジャン「了解、ラムル様。」


 ジャンの投影したホログラム。

リターナの画像、最初の1枚。ラムル、バンズ、ポートルの3人の上陸の際のスナップだ。


 ラムル「順に送って。」

宇宙船カーラント越し遠くに見える惑星ノアーナ。宙に浮くバンズの画像。そして廃墟らしきの入口。紋章が刻まれた壁の一部。


 ガルシア「止めて、ジャン。ラムル、ここは?」

ラムル「建物の廃墟のようだったわ。紋章があった。忘れてはいけない、リグール=ジュードの紋章。」

ガルシア「ルイス!私達が見つけられなかった紋章よ。」

ルイス「本当!ラムル達が見つけたの⁉︎」

ラムル「ええ、バンズとポートルも一緒。何度も出掛けてたわ。」


 ガルシア、ルイスの側に寄り顔を見合わせる。


 ガルシア「血は争えないわね、ルイス。」


 ルイス、ガルシア微笑む。側のラムル、キョトン。


 ルイス「ラムル。私達も若い頃はよくリターナへ出掛けたのよ。異星人と間違えられて対策軍に追い回されたりした事もあったわよね。」

ガルシア「ルイスの宇宙船ふねは速くて、対策軍のフローター、いくつか墜落させたっけ。それがきっかけでブロントに出会ったもんねルイス。」

ルイス「そうね、お陰で拘束されずにノアーナに戻れたし、」

ガルシア「今の私達があるのよね。」

ルイス「ええ。……ラムル、ますます私達はあなたの味方を誓うわ。ブロントには一切内緒よ。」

ラムル「母上、ガルシアさん……。」


 日も暮れて夜のとばりが降りるオフェイル邸の画。Fade-out。


 ノアーナ対策軍オートメッセージ(OM)


 OM「こちらノアーナ対策軍。緊急事態、緊急事態。自立移動惑星G15接近中。ノアーナ全土の住民は、速やかに使用エネルギーを最小限に設定して暫く過ごして下さい。繰り返します。速やかに使用エネルギーを最小限に設定して暫く過ごして下さい。解除通信をお待ち下さい。解除通信をお待ち下さい。」


 ノアーナ星の平和な日常、度々この時は非日常となる。

G15を安全な距離に回避するまで。

 当のG15はと言えば、リターナ戦役の際、ノアーナまで影響を受けて消滅したと考えられている様で、特別探知しようとまでしてこないのだった。


 暗い宇宙空間に、遠くからG15がゆっくりとやって来る画。

画面を通過して行く。


 星の瞬き、そして暫くの時間が経過……。

 OM「こちらはノアーナ対策軍。緊急事態宣言解除、緊急事態宣言解除。オートメッセージ終わります。」


 ようやく緊張から解かれるノアーナ各都市のシーン数カット。

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