第26話 完全消去-デリート-[第2階層編]

「クソッ!クソッ!!クソおぉぉぉぉ!!!



サドの表情には余裕さのカケラもなく、額にはひたすら汗をかいていた。



「攻撃の1つもまともに当てれなくて、あんなに粋がってたなんて、ダサいなオマエ。」



「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




オレの安い挑発に乗せられ、懲りずに攻撃を繰り出すがあまりにも単調すぎるため、もはやカスる気配すらなかった。



「ほらほら、どうした?」



サドの攻撃を交わしながら、反撃でパンチを数発お見舞いする。


そこまで力も使っていないのだが、簡単に床に寝転がせれてしまえるほどの力の差があった。



オレは倒れているサドの頭を踏みつけた。



「ところでブタゴリラくん、約束覚えてるか?オレの言うこと聞くんだったよな。二度と腐った真似はしないって誓うか?」


「ブタゴリラブタゴリラ……ってうるせーよ。俺様はまだ負けてなんか……。」


オレは脚を上にあげると、そのままサドの脳天目掛けて踵落としを繰り出した。


「ガハァ……。」


サドの歯が数本折れ、蹴りの風圧で周囲の地面一体がひび割れて大きく凹んでしまった



サドの目にはすでに生気はなく、白目を向いている状態だった。



「終わったな。」



オレがサドから離れようとすると、システムメッセージが表記される。



ー【世界クエスト】継続中です。対象を殲滅してください。



「殲滅……ってどうすればいいんだ?」



するとシステムから続けて問いかけがくる。



ープレイヤーイザナは、世界クエスト専用スキルを習得しますか?《YES / NO》



「【世界クエスト】専用スキル……か。これ使わなきゃクエストクリアできないってことなのかな。」


オレは迷うことなく《YES》を選択する。



ー【世界クエスト】専用スキルを獲得しました。

専用スキル名【完全消去デリート】。


「なんか物騒な名前だな。」


ー専用スキル【完全消去デリート】は対象のアカウントデータを完全に消去するスキルです。



ー専用スキル【完全消去デリート】を使用しますか?《YES / NO》



「《YES》だ。」



《YES》を選択すると、オレの身体の周囲が瞬く間に光輝き、その光が右脚に集約された。



「これで、蹴っ飛ばせばいいのかな?」


横たわってるサドに向けて、光る脚で蹴り飛ばした。



するとサドのアバターに大きな穴が空き、その穴がみるみるうちに広がったかと思うと、ポリゴン状になって霧散してしまった。





ー【世界クエスト】をクリアしました。


ーカルディアの領主から感謝状が届きました。


ー新しく【異世界人の救世主メシア】の称号を入手しました。


ー特別報酬により専用装備【黒刀-月影-】を入手しました。


ーレベルが上がりました。


ーレベルが上がりました。






「ふう。こうするしかなかったとはいえ、さすがにPK(プレイヤーキル)はやばかったかな……。」



と心配したが、オレの不安をかき消すかのように観戦していた周囲からは、歓声が湧き上がった。



オレはかなでたちのいるところまで走っていった。



「イザナくん、ほんと素敵だったよ。」


かなでは惚れ惚れした様子でオレにそう伝えてくれた。



「まさか……誰も手出しできなかった“略奪のサド"を倒しちまうなんて。」


これにはタケルも参ったといった感じだ。



「イザナ……。本当にありがとう。私のことも、かなでのことも守ってくれて……ルイの仇をとってくれてありがとう。」


ほむらは大粒の涙をボロボロとこぼしながら、安堵した様子でそう語った。



そして3人の近くには情報屋のリンカがいた。



「キミは本物の規格外だったんだね。あたしも恐れいったよ。」



「オレの情報に関して、オフレコにって約束は守ってもらうぞ?」



「もちろん。あーぁ……ものすっごいネタなのになあ。でも大金を前払いでもらっちゃってるし約束は守るわよ。」



これでオレの情報が周囲に漏れる心配はないだろう。



オレたちは大闘技場から再度【農耕の街グランディア】へとワープした。



"ルイ?!"



街に戻ると、再びログインしたルイの姿があった。



みんなで一斉に声をかける。



「あはは……。かなり病みそうになったっすけど、そっか。イザナくんが仇をとってくれたんっすね。」


「ばか!あほ!私のためにあんなことしないでよ!……でも、私のために立ち向かってくれてありがとう。」


ほむらは泣きながら、ルイに感謝の言葉を述べた。

ばかとあほのオマケ付きだったが。





こうして、オレたちは久し振りに全員で集まることができたのだった。






【ステータス一覧】

【名前】イザナ

【レベル】27(127)

【メイン職業】暗殺者

【サブ職業】(???)隠蔽中

【スキル一覧】

☆マナコントロール☆ダブルアタック☆神速☆雷を纏いし者☆気配遮断☆背面強襲(NEW)☆神域(NEW)☆(???)隠蔽中



HP(体力):3500

MP(魔力):15000

ATK(物理攻撃力):3300

MATK(魔法攻撃力):55200

DEF(物理防御力):1250

MDEF(魔法防御力):550

AGI(素早さ):5230

CRI(クリティカル):10


【装備一覧】

武器(手):なし

防具(頭):なし

防具(体):傲慢の黒上衣(D)

防具(腕):なし

防具(足):傲慢の黒下衣(D)


【状態異常】

魔神王の呪い

覚醒の挑戦者(NEW)


【称号】

異世界人の救世主(NEW)




○《黒刀-月影-(C)》【所持数:1】

→所持者の成長と共に成長する刀。ランクと名称、付与スキルの効果が変化していく。

装備効果:ATK(物理攻撃力)+2000



○【背面強襲バックスタブ

→背後からの強襲によりダメージが5倍になる。ただし、敵から感知されている場合の背後ダメージは2.5倍になる。



○【神域ゾーン

→1分間極限の集中状態になる。全ての攻撃が100%クリティカル(ダメージ2倍)となる。再使用可能時間は3分後。



○覚醒への挑戦者(NEW)

→覚醒に必要な条件を満たしつつある者の証。レベル40になると覚醒クエストの受注が可能となる。


○異世界人の救世主

→異世界人を救った英雄に贈られる称号。

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