第27話 レイドボス再び[第2階層編]

 "略奪のサド"事件以降、オレたちはまた5人でパーティーを組むようになっていた。


 すでに終わらせてしまっているクエストもあったが、みんなで一緒にするとやはり楽しかったのだ。



 そして、いよいよ第2階層のエリアボス討伐イベントである【レイドクエスト】を3日後に実装することが運営より発表された。



 前回の第1階層の際には、攻略会議が開かれていたが、結果的に大失敗だったため、今回はβテスターたちから【レイドクエスト】に参加を表明しているパーティーリーダーへのみ情報の公開がされることとなった。




「よし、みんな聞いてくれ。第2階層の【レイドクエスト】の情報を持ってきたぞ。」


 パーティーリーダーであるタケルが、みんなに情報について話し始める。


「ボスの名前は【クイーン・オブ・ザ・キラービー】で通称:【女王蜂】と呼ばれるボスモンスターだ。」



「うわぁ、私虫苦手なのに……。」


 かなでは本当に虫苦手らしく、ものすごく嫌そうな顔をしていた。



「どんな攻撃してくるんっすか?」


 ルイの質問に答えるため、タケルが話を続ける。



「広範囲攻撃は少ないみたいだけど、毒や麻痺で身体の自由を奪われるみたいだな。」



「ってことは第1階層の時の感電と似た状態になるかもしれないってことね。」


 すかさずほむらが意見する。



「あとは、今回の女王蜂はかなりの大きさだけど、宙に浮いてるらしい。近接系の攻撃はほとんど当たらないから今回も魔法攻撃が中心になるみたいだ。」


 タケルは全ての説明を終えると一息付く。


「また魔法攻撃が優遇されるんっすね……これじゃあ僕の出番ないっすよ。」


「魔法だから私にドンっと任せてよね。」


 少し残念そうなルイに向けてほむらが、自信満々で話す。


 サドの一件以来、以前にも増して仲が良くなったようだった。



「イザナくん?大丈夫?」



 オレが暫く黙りこんでいることに気付いたかなでが、声をかけてくれる。



「あ……ごめん。ちょっと考え事してて。」



 オレは第1階層で領主であるリーシャさんから貰ったアイテム"紅の巻物“を見つめていた。



 この第2階層でも【緊急クエスト】が受けられるというアイテムだったが、それらしいイベントは未だに発生していなかったのだ。



 ……クエストの見落としはなかった。一体どこに隠されてるんだろうか?



「イザナくん、イザナくんってば……むーーっ。えいっ!」



 ふいにかなでが "ぎゅーっ!" と抱きついてきた。



 ここで自分がまた考えにふけってしまっていたことに気付かされた。



「かなで……?」


「イザナくん考え事ばかりしてるから、疲れてるのかと思って。だから少しでもリラックスできるように "ぎゅーっ!"なの。」



 ……これは鼓動の方がリラックスできないんですけど!


 不可抗力とは言え、身体の柔らかさや胸の感触がするし、かなでの温もりを直接に感じれてしまい、色々な意味でやばかった。




 タケル、ルイ、ほむらには、またもややれやれといった表情をされてしまうのだった。

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