第25話 PVP[第2階層編]
PVP専用ステージの大闘技場には、イザナくんと“略奪のサド"が対面で向かい合っていた。
観客席には私とほむらちゃんの他に数名のプレイヤーと、被害にあったと思われるNPCの家族の姿があった。
そして、今更ながらタケルくんが姿を現した。
「かなで、ほむら……遅くなってしまってすまない。ルイは……?」
私はまだログインしていないことを伝えると、タケルくんは一言
"クソッ!"
と呟いた。
「あいつは"略奪のサド"だよな?βテスターたちの間でも、問題になってたんだ。」
「どうして、止めに来れなかったのよ!」
ほむらちゃんが声を絞り出しながらも鋭い口調で話す。
「行きたかったさ……。でもあいつが圧倒的に強すぎて誰も止めれなかったんだよ。」
タケルくんが悔しそうに話す中、私は1つひっかかっていることがあった。
「でもイザナくんは、あんなやつ大したことないって……言ってたよ?」
「大したことないわけがないんだよ。あいつ、ついさっき更新された情報によればレベル15だぞ。全プレイヤーの中で1番レベルが高いんだよ。つまり現時点で最強プレイヤーってことだよ。」
「そんな……。」
「俺もβテスターたちといて、かなりレベリングを頑張ってしたけど、それでも13だからな。レベル15なんて本当に化け物だよ。」
それを聞いたほむらちゃんは、ますます気が動転してしまった様子で、
「あはは……私もかなでもおしまいね……。あいつに好き勝手されて……それで……それで……ううっ。」
と話しながら泣きじゃくってしまった。
私はほむらちゃんの背中をトントンとしながら、自分はとんでもない約束をしてしまったことに今更ながら気づいた。
タケルくんは状況を読み込めていないようで"どういうことだ?"と質問してきた。
「イザナくんが私たちの代わりに立ち向かってくれた時に、あいつが私を賭けに欲しがったの。イザナくんは止めようとしてくれたんだけど、私が自分からもしもの時は全てを捧げるって約束してしまったの……。」
「なんでそんなことを?!このままじゃまずい。すぐにこの戦い自体をやめさせないと!」
「もう無理だよ。だって、もう始まっちゃうよ。」
ステージでは今まさに2人の戦いが始まろうとしていた。
♢
大きく吹き抜けになっているステージで、オレは両手をポケットに突っ込みながら立っていた。
「ハッ。もやし野郎のくせに随分と余裕そうだな。HP無限コースだからって一撃でリタイアとかやめてくれよ。」
サドは戦闘の構えに入る。
手には大きな拳型の装備が付けられているのが見えた。
……拳型ってことは【
【
「さぁ、ぺしゃんこに捻りつぶしてやるよ!!もやし野郎!!」
サドは力強く地面を蹴ると真っ直ぐ突っ込んでくる。
オレが回避しようとするとすかさず、
「ハッ。させねーよ!スキル【
噂のユニークスキル【
……なるほどな。これで動きを鈍くさせて、確実に1撃目を当てるって作戦か。
だが、オレは突っ込んでくるサドの攻撃をひらりと回避する。
「はぁ?なんで避けれんだ?……そうか、もやし野郎は【
サドがすぐさま次の攻撃に転じようとしてきたので、オレはスキルで気配を消した。
「おいおい、もやし野郎。チビって隠れたって無駄なんだよ。【
「余裕……で……あぁ?……どういうことだ??」
ここにきてサドの様子が明らかに変化した。
「馬鹿な?!【
オレの姿が見えなくなっているサドには、焦りの表情が浮かんでいる。
"出てこい!"と言われた通りに、オレは颯爽とサドの目の前に姿を現し、同時に顔面へ蹴りの一撃をお見舞いする。
あれだけ大きな巨体が、まるで小石かのように一瞬で吹っとび、後ろの壁に激突した。
「グハァッ……なん……なんだよこの力は……、てめえ、もやし野郎……。俺様はレベル15だぞ!!それが格下の、しかも【
「あのさ、誰がいつ【
「ハァ?……言われてみれば【
「はぁ。【
オレは大きく息を吸い、ハッキリとした口調で目の前でだらしなくも寝そべっているサドに向けて口を開いた。
「オレの職業は【
《スキル詳細》
○【
→完全に気配を遮断し、気配感知系のスキルでも感知されなくなる。ただし格上の相手には効力は小さくなる。また自身以外に、自身のステータス画面や情報等にもスキルを使用することができる。
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