第24話 仲間のために[第2階層編]

 オレはリンカから得た情報を持ち帰り、ほむらとかなでのいるところまで戻ってきた。



 2人を心配させまいと、今回の相手はそこまで大した強さではないと言っておいた。



「それならよかった……。」


 オレの言葉を聞いて、かなでは少し安心したかのようだった。



 ただ、ほむらだけはまだ震えていた。


「私……実は無理矢理フレンド登録させられたの。」


「えっ?!」


「だから……さっきから呼び出しのメッセージが止まらないの……。怖いけど行かなきゃ……私が行かなきゃ……かなでもイザナも……ルイみたいになっちゃう。もうあんな、あんな風に……やだやだやだやだやだやだぁぁぁぁぁぁぁ。」



 余程トラウマになってしまっているんだろう。

 悲痛な声で叫び続ける姿は、ほむらとは別人でしかなかった。


「分かった、オレも一緒にいくよ。かなではここで待っててくれ。」


「ううん、私も一緒に行く。ほむらちゃんに付いててあげたいから。」


 離れてしまうより、オレの目の届くところの方が護ってやれるかもしれないと思ったので、渋々ながら了承することにした。



「じゃあ3人で行こう。」



 オレたちは"略奪のサド"から呼び出しのあった場所へと向かった。



 ♢



「あのゴツいのが、サドか?」


 指定された場所に着くと、たくさんの子分(?)とも言えるような者たちに囲まれた、大柄のマッスルプレイヤーが膝を立てて座っていた。



「そう……あいつがルイを……私を……。」


 ほむらが震えながら答える。



「おおう、何だ何だ?ツレなんて連れてきやがってよ。さっさと俺様の隣に来いよ?」


 図太い声であたかもそうすることが当たり前かのように、サドは話を進める。


「あなた最低よ!これ以上私たちに付き纏わないで!」


 かなでが怒りに震えた声で、牽制する。



「あ?お前なんだよ?ってかすっげー可愛いな。お前も俺様の女決定な。」


「あなたのになんて絶対ならないからっ。」


「なるんだよ。俺様の激しいテクニックで身体の隅々まで堪能してやるからよ。お前もよがりまくりになっちまうと思うぜ?」


「ほんとさいってー!」


 かなでの心から蔑んだ言葉を聞いたのは、これが初めてかもしれない。



「話してるところ悪いんだけど、ちょっといいかな?オレたち迷惑してるんだよね。」


 このままだと埒があかなそうだったので、横槍をいれてみた。


「なんだ?黒ずくめでカッコつけてんのか?このもやし野郎。その身なりからすりゃ、おおかたコソコソ隠れるしか脳のない【シノビ】ってとこか?悪いことは言わねーから、お家帰ってママのおっぱいでも吸ってな。」


 正直低レベルすぎる発言に、怒りさえ湧かなかったが、オレはその安い挑発に乗ってやることにした。



「話聞けよブタゴリラ。身体ばっかりでかくて、頭足りないとか未だにママにおしめ替えてもらってんのか?」


 オレの言葉を聞いて、周囲の子分(?)たちの表情が一気に青ざめる。


「ハッ。まさかジョークが言えるもやし野郎とはな。この世界、強けりゃなんでも従えれんだよ。手っ取り早くタイマンしようや?俺様が負けりゃお前の言う通りに何でもしてやるよ。だがお前が負けたら、そこの可愛い女は俺様のもんだ。」



「賭けか。でも、かなでは関係ない・・・。」


 オレが答え終わるか終わらないかで、かなでが話に割って入ってきた。


「いいよ、ブタゴリラさん。イザナくんが負けたら、私の全部をあなたにあげるわ。」


「ちょっ、かなで?」


 さすがのオレもこれには慌てて、話をそらそうとしたが、サドの表情はこれでもかと歓喜に満ちていた。


「条件成立だな。さいっこーだぜ。今のお前が信じきってるこのもやし野郎をぶちのめして、絶望に変わる表情を見ながら、隅々まで堪能するのは楽しみだ。」


 サドから汚い言葉が発っされた後、PVPのHP無限モードに招待される。


 すると、突如システムの声が流れ始めた。




 ー現在受注中の【世界クエスト】の殲滅対象者が現れました。対象を殲滅してください。



 殲滅対象:"略奪"のサド(レベル15)



 ……おいおい、レベルがリンカの情報の時より更に上がってんじゃん。




 オレは招待されたPVP(HP無限モード)に参加を表明し、PVP専用の大闘技場にワープさせられた。

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