第2話

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 聖水で作った霧の中、フランケン・Q・シュタインが屍奴隷(グール)たちを一掃していく。


 背中から出ている六本のアームのうち、サブマシンガンを備えたアームが、けたたましい音を立てて屍奴隷たちへ弾丸をばら撒く。下半身ごと脚を撃ち抜かれた屍奴隷たちが倒れ、それをアサルトライフルで一体づつ頭部を撃ち抜くいていく。


 ショットガンを持った両腕で、近寄ってくる屍奴隷を首ごと吹き飛ばす。


 朽ちた屍奴隷たちの中で、比較的に身体能力を残した屍奴隷が数体、疾走してこちらに向かってくる。ヴァンパイアとしての怪力を備えた屍奴隷が、こちらに拳を振り上げて飛び掛ってきたところで、肉厚の大型ナイフを胸に突き立てる。大型ナイフで突き刺したまま屍奴隷を振り回し、周囲に集まってくる他の屍奴隷たちをなぎ倒した。


 フランが素早く腰に下げていた手榴弾を二つ取り出し、ピンを抜き、投げる。


 二連続の爆発とともに、屍奴隷たちが吹き飛んだ。


 まだまだ、聖水の霧の中、フランの元へ屍奴隷たちが集まってくる。


 突然、草むらから飛び出してきた屍奴隷。後ろへ飛んでショットガンから放たれた散弾を浴びせる。


「ああ、よかった」


 声の主は、姿を隠そうともせず堂々と現れた。新しい屍奴隷達を引き連れて。


「ここに巳代さんはいないのね」

「彼女なら、今頃館の中だよ」

「そうですか」


 中世時代の雰囲気を持った全身甲冑に身を包んだ、若く見える女ヴァンパイアだった。


「君がダルヴァリーなんだね」

「はい、そうです」


 ぽろぽろと、しずく涙を流す女ヴァンパイア――ダルヴァリーを見据えてフランが言う。


「戦わないで済む方法は、無いのかな?」


 ダルヴァリーが泣きながら、首を横に振った。


「もう、エリザベート様から命令を受けてしまいました。無理です」


 吸血鬼は、自分より上位の吸血鬼に決して逆らうことができない。自身に否応無く、従わなければならない。


 フランがアームに備えている銃器の弾装を取り替える。素早く隙も見せずに。


「君は珠枝の友達で、良いヴァンパイアだって聞いているよ。エリザベートを倒しても、命令は解けないのかな?」


「私は永遠に、エリザベート様の命令に従っていなければなりません」


「そう、なんだ」


 背中から出ている六本のアーム、そして自分の腕に持った銃器を全て、フランはダルヴァリーと新たな屍奴隷達へ向けた。


「せめて何か、彼女に伝えたい事は、あるのかな?」


 十秒弱かの静寂の中。言葉を待つフランに、ダルヴァリーは口を開いた。


 彼女は覚悟を決めて、


「……ありません。もう十分気持ちの旨は伝えました。でも、私は……生きていたかった」


 ダルヴァリーが腕を持ち上げ、控えていた屍奴隷達へ合図を送る。統制の取れた屍奴隷たちが、一斉にフランへ向かって襲い掛かる。


 フランは持っていた全ての銃器を撃ち出し応戦した。

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