第4話

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 吸血鬼に血を吸われた者は屍奴隷となり、吸った者に逆らう事はできなくなり、完全服従の関係になる――しかし、上位の吸血鬼の血を飲むことで、与えられた吸血鬼と同じ位にまで自身の位が高まり、完全服従のくび木が外れる――つまりは吸血鬼の中での上下関係は、血に依存しつつ、絶対に抗えないと同時に、上位の吸血鬼が下位の吸血鬼へ血を与える事で、上位の吸血鬼へ位を上げることができる。


 平たく言えば『自由』が手に入る。


「巳代希美」


 ヴィヴァリーがこちらを呼ぶと、金の杯を差し出してきた。中にはヴィヴァリーの手首から出た吸血鬼の血が入っている。


「はい」


 これを飲めば、自分の吸血鬼としての位が上がる。今より上位の吸血鬼になれる。


 下位の吸血鬼グールは、吸血鬼としてその名のごとく弱い。吸血鬼としての能力がまったくない状態であり、日光や強い臭いに対する弱点も克服されない、さらにほとんど人間に近いままだ。むしろ長所よりも弱点のほうが多い。


 そして上位の吸血鬼は、吸血鬼としてのさまざまな能力を有しながら弱点も克服される。その反面、人間としてどんどん離れていくが。


(これを飲めば、こんな化け物達の……仲間入りになる。完全に)


 自分が望んでいた事とはいえ、気持ちは二の足を踏んでしまう。かといって、下位の屍奴隷のままで、いつかハンターに討伐されるまで生き続けるなんてできない。


(もう私はとっくに、人間としてはいられない。吸血鬼にされて、吸血鬼になって……そうなってしまったらもう、吸血鬼として生きていくしかない)


 震えている手を胸に置いて、震えを押さえつけて、決めなければならない。


(人間としての私はいない。こうして生きていくしかない――)


 ヴィヴァリーの差し出してきた金の杯を受け取る。手の震えで中の血をこぼしてしまいそうな錯覚になって、今度は力の入らない指先で金の杯を落としてしまわないか不安になる。そして、意を決して――


 金の杯に唇を重ね、上位吸血鬼の生き血を飲み干した。

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