第7話

 7:


 熱い。暑い。あつい。

 昨日よりも熱い。


 苦しい。喉が渇く。喉が干からびたようだ。

 耳の裏でどくどくと血液が流れる音がする。

 頭も痛くなってきた。


 わんわん鳴り響く頭。


 ――コッチヨ、コッチ。


 誰かが呼んでいる。


 ――コッチニキテ、サア。


 鉄の匂い。焼けた臭い。


 昨日の晩。街灯が倒れた時……確かに聞いた。


 聞こえてきた音。


 鉄を引っ掻く音。エンジン音に紛れて聞こえていた。


 そうだ、思い出した。


 俺がよろけて尻餅をついたときにすれ違ったバイク。


 それと同時に頭の上に何かが飛んで来て、すぐ後ろから一瞬だけ金属を引っかく音がして、街灯が倒れたんだ。


 もし、俺が転ばなければ、


 ――俺の頭が飛んでいた?


 あの時俺は襲われていたのか? 何で? どうしてそんなふうに思った?


 水が……水が欲しい。


 水じゃない、もっと濃い……どろりと濃度があるモノが欲しい。


 喉を潤したい。渇きを満たしたい。


 エンジンの音。金属を引っかいた音。弾ける音。


 硬いものが割れた音。水の音。


 暗い、熱い、暗い熱い。欲しい。乾く。


 ――サア、オキナサイ。オキテ。


 起きろ。


 目が覚めろ。目を開けろ。


 頭が起きて目が覚めて。


 目を開いて。


 目の前には。

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