4話「鍵」

「それから、なぜ教室に鍵をかけなかったのですか? 鍵をかけていれば盗難事件は未然に防げましたよね?」


皇太子殿下が担任の先生を見る。


「この部屋はいつもこんなに不用心なのですか?」


「いつもは鍵をかけています、今日はたまたま……」


担任教師が皇太子殿下から目を逸し、ボソホソと話す。


「つまりこういうことですね、たまたま教師が鍵をかけ忘れた日に、たまたまナウマン公爵令嬢の体調が悪くなり、たまたま保健室に先生がいなくて、たまたま盗難事件が起きたと……偶然が同じ日に重なるなんて奇妙ですね」


皇太子殿下が教師と王太子をジロリと見た、二人はさっと俯いたまま体を震わせていた。


「ナウマン公爵令嬢、お聞きしてよろしいですか?」


皇太子殿下が私に問う。幼いが怜悧れいりな青い瞳が真っ直ぐに私を見つめている。


「はい皇太子殿下、何なりとお尋ね下さい」


「どうしてダンスのレッスンを休まれたのですか?」


「急にめまいがしまして」


「めまいですか? めまいがする前に何かを飲んだり食べたり、何かの匂いを嗅いだりしませんでしたか?」


「そういえば王太子殿下からお茶を頂きました」


「へー、お茶をね」


皇太子殿下がチラリと王太子を見る、


「なっ、貴殿は私を疑っているのか?!」


王太子が大きな声を上げる。


「いえ別に」


「とにかくリリーの鞄から盗まれたアクセサリーが見つかったのだ! 犯人はリリーで決まりだ!! 国外追放にしたのだ! 早くこの国を出ていけ!」


王太子がキッと私を睨む。


「ナウマン公爵令嬢、行くところがないのでしたら是非我が国にお越しください、あなたならいつでも大歓迎です」


皇太子殿下がニコニコしながら話す。


「ありがとうございます、皇太子殿下」


国を追われたらロイヒテン帝国に亡命します。


「その前にあなたの冤罪を晴らしましょう」


「えっ?」


私の冤罪を晴らす?


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