第33話、アリス

 次の瞬間、俺はギルド2階の酒場にいた。

一階に駆け降りると、見慣れたカウンターにいつものお姉さんが座っている。

どうやら、元の場所に戻れたようでホッとする。

俺はカバンからベルトを取り出し、シルビアの家に飛んだ。


 ドアをノックすると、眠そうに目をこすりながらシルビアが現れた


「あれ?どうしたの?」


「あれから何日たった?」


「えっ?」


 どうやら、魔王を討伐したその時間に戻ってこれたようだ。

俺はシルビアに礼を言い、エリスを連れて家に帰った。


「おじさん、魔王は?」


「安心しろ、倒して戻ってきたんだ」


 少ししてゼータも戻ってきた。


「おかえりなさいませ」


「ああ、無事戻ってこられたよ」


 俺は義足をエリスの足に装着して、靴下とスニーカーを履かせた。


「おじさんの世界のものって、かわいい」


「気に入ってもらえたようだな」


 俺は数日かけてモデルガンを魔導銃に改造したのだが……重いので結局元のものを使うことにした。

そのあとは、スイーツ三昧と、エリスのファッションショーだ。


 だが、やがて魔王が復活し、討伐を繰り返す。

そのサイクルが変化したのは5回目の時だった。

日本の部屋に戻って本を確認すると、末尾に完結の2文字が付け加えられており、何日待っても変化はなかった。


「まさか、これで終わりなのか……」


 俺は、最後の手段に出た。

完結の文字の後ろに、「新・ 開かずのダンジョン」と付け加えたのだ。

その瞬間、俺は見慣れたギルドの酒場にいた。

階下に降りると、いつもの受付嬢がいた。


「戻れた……」


 俺は屋敷に帰ったのだが、屋敷は廃屋モードに切り替わっており、初期設定が必要だった。

だが、地下にはモデルガンや工具があったし、何ら変化は見られないのだがエリスはいなかった。

ゼータに聞いても、以前の記憶はなかった。


 俺はシルビアの家に飛んだのだが、住人は別の人だった。

俺のギルドカードは抹消されたらしく、俺は”池袋田吾作”として新規カードを作成した。

何か手がかりが欲しくて、毎日掲示板を確認して、受注して、仕事をこなしていった。

そして、とある日のことだった。


「あのぉ」


「はい」


「正面に立たれると邪魔なのでどいてもらえませんか」


聞き覚えのある声とセリフ……


「エ、エリス……」


「いえ、私アリスですけど……」



完結です。

拙作におつきあいいただき、あろがとうございました。

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おっさんはただのおっさんだった モモん @momongakorokoro3

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