第32話、帰還

 それからの俺は、エリスをおいて依頼を受けまくった。

魔王と対峙する前に、少しでも力をつけておきたかったのだ。


「無理しないでください」


「大丈夫。無茶はしてないから」


 そしてエリスを抱く。

何度も何度も尽きることなくエリスを抱いた。

子供ができてほしい。



「魔王の情報は入ってる?」


「どうやら、北の洞窟に出現したようです」


「わかった、ありがとう」


 情報料として銀貨一枚を受付嬢に手渡す。



 俺はエリスに伝えた。


「三日後に出発する」


「はい……」


 魔王を倒せる保証はないし、帰ってこられるかどうかもわからない。

ただ、不安だけが増していく。


 三日後、俺はシルビアにエリスを託して出発する。

シルビアには、三人で三か月暮らせるだけの金貨を渡した。


「よろしく頼む」


「帰ってきてあげてね」


「ああ、絶対に帰ってくる」


 魔王の取り巻きを魔導銃で倒しながら、俺は魔王のもとにたどり着く。

俺は、ゼータに血を与えながら言った。


「血を抜きすぎてヘロヘロなんだけど……」


「それだけの軽口をたたけるなら、もう少しもらっちゃおうかな」


「やめろ、失血死する」


「じゃ、いきますか」


「ああ、あてにしてるぞ」


「雑魚は抑えるから、魔王を!」


「ああ、わかってる」


 魔導銃で削りながら、俺は魔王の心臓に刃を突き立てた。

次の瞬間、俺は新橋の居酒屋にいた。友人Bの姿はない。

まさか、夢……

俺はカバンから例の本を取り出した。

中を確認すると、空白だったページが埋まり、俺の魔王討伐記が書かれていた。


 夢ではない。カバンの中は無限の空間が広がり、中には札束が詰まっている。

ここで、本を誰かに譲れば、俺の物語は終わるのだろう。

だが、俺は戻らなければならない。

戻るタイミングは不明だが、準備を始めた。


 俺はネットカフェで義足の販売業者を確認し、下腿義足を2セット注文した。

次に本屋へ行ってスイーツ関連の本を買いあさり、材料を大量に購入した。

そして、モデルガンだ。

やっぱり雰囲気が大事なので、魔導銃を改造するのだ。

選択したのはMP5とM16のモデルガンだ。

そしてホームセンターに行って、工具類も一式購入。

 

 一息ついて、スマホの日付を確認すると、Bと飲んだ翌日だった。

俺は自宅のアパートに戻り、上司にメールをした。

体調不良で数日休ませてもらうという内容だ。

数日のうちに義足が届いた。

俺は、義足にあわせて靴や靴下を買い込み、ついでに女性用の下着や衣類を買った。


 準備を終えて本を確認すると、書き出しは「続・ 開かずのダンジョン」に変わっていた。

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