第4話、おっさんは冒険者登録した

「すみません冒険者登録お願いします」


「はい、迷い人さんですね。

登録には銀貨2枚必要ですが、お持ちですか」


「あっ、大丈夫です」


「じゃ、こちらの用紙が一枚銅貨5枚になります」


「筆記具はお持ちですか」


「ああ、持ってます」


「じゃあ、必要事項を記入してお持ちください」


「ここで、書いてもいいですか」


「少し横にずれてくださいね。

はい、次の方どうぞ」




「えっと、名前か……

どうでもいいや、下落合田吾作と。

住所はなし、年齢は多分35才くらいだな。

職業は会社員で、特技は絶対回避と収納だな。

これでいいですか?」


「えっと、職業の会社員というのは」


「前の世界の職業なんですけど」


「特技に収納があるんですから、ポーター(荷物持ち)にしてください。

訂正は無効になりますので、はい新しい用紙です」


俺は銅貨5枚で新しい用紙をもらった。


「ほかのところは問題ないですか」


「ええ、大丈夫ですよ」


俺は書き直して受付嬢に用紙を渡した。


「こちらの水晶玉に手をおいてください」


「魔力量の測定ですか?」


「いえ、うそ発見器です」


「えっ、名前は記憶がないので思いついた名前を書いたんですけど」


「はい、大丈夫でした」


えっ、俺の名前って、そうなの?


「じゃ魔力量の検査をご希望ですね。

銀貨1枚になります」


「えっ、有料なんですか」


「これは任意検査ですから。

でも、魔力量が多いと、魔法を覚えられますよ」


「じゃ、お願いします」


「では、指を切ってここに血を垂らしてください」


「針か何かありますか」


「カミソリが銀貨一枚になりますけど」


俺はカバンにカッターナイフがあったのを思い出して取り出す。


「あっ、ありましたからいいです」


カッターナイフで指を切って血を垂らす。


「あっ!」 思いのほか深く切ったようで、血がボタボタと垂れてしまった。


『キュア!』


お姉さんが唱えると傷がふさがった。


「今のは?」


「治療魔法です。

銀貨1枚になりますっと、魔力量13ですね。

これだと、指に火をともす程度しか使えませんよ」


「今の治療魔法とかは……」


「最低でも魔力量50は必要ですから、無理ですね」


「はあ、じゃこれで登録完了ですね」


「ギルドカードの発行はどうしましょう」


「それって……」


「銀貨3枚です」


「はあ、お願いします……」


こうして俺の残金は銀貨2枚になってしまった。


「これくらいで泊まれる宿ってありますか?」


「紹介料がかかりますけど」


「あっ、自分で探します」

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