第8話 / 夢物語

最近身体がだるい。

睡眠はとってるが眠りが浅いように感じる。

なかなか転職先が決まらないからだろうか?


それとも、最近、眠ると同じ夢を見るようになったからだろうか?


日を追うごとに鮮明になっている気がする。


なのにどんな夢だったか断片的にしか覚えていないので朝起きたら紙に書き留めるようにしていた。


今朝もまた同じ夢を見て目を覚ました。


忘れない内に直ぐに夢の内容を書き留めた。


今まで書き溜めたメモを纏めてみると大体こんな感じの短い物語が出来ていた。




・・・・




今まで見た事の無い景色や異様な形をした建物が並んでいる。

奥には大きなお城の様な建物が見える。


視点がそのお城の中へ移動する。

国王?だろうかそこに偉そうな人が玉座に座っていてそこの部屋で視点が固定される。


よく見るとその国王の前に立っていたのが自分だった。

周りには仲間?だろうか何かを喋っている。


彼らの姿が印象に残っている。人間だけでなく、獣?の様な姿をした者も居た。


何より夢の中の自分が頭から離れない。

確かに姿、形は自分自身だったが他人に見える。


国王と言えば一企業で言えば会長のようなものだ。臆するのが普通だろうが、彼は堂々としており表情や所作、威厳というかオーラがあり自分が持っていないものを持っていた。


状況が一変した。


不穏な空気が流れた。国王と彼が言い争いになっている。


「XXXXXXXXア王国は崩壊の一途を辿っていてる。国民の生活は苦しくなる一方だ。あんたが王の座から退かない限り改善されることは無い!」


彼が鋭く説き伏せる。


「誰に向かって口を聞いているんだ若造が!!兵を呼べ!!」


激昂した国王が感情的になって怒鳴った。


何処からともなく大勢の兵が彼らをあっという間に取り囲んだ。


緋色ひいろ!!囲まれたよ!!どうする?」

隣の魔法使い?みたいな娘が彼へ確認している。


「XXXXXXXット!!計画通り周りの兵を停滞魔法で止めてくれ! 浅XXX! 深XXX!お前らはXXXXXXットのサポート!|臙XXX!国王を抑えるからフォロー頼む!」


「了解!!」


彼らの連携は見事だった。


何よりも彼の的確な指示によりあっという間に兵たちを制圧してしまっていた。


彼が持つ剣先が王の喉元へ突き付けている。


「流石だな... “XXXX”の軍団 緋色殿」


「当然だ。何も準備せず、のこのこと会いに来たと思うか?全て想定の範囲だ」


「噂通り憎たらしいほどの自信... 全て想定の範囲か...くっくっくっ」


「気に入らないな?何がおかしい?」


きゃあ!! 後ろで叫び声がする


見ると臙XXX が XXXXXXXットの首元に鋭い爪を突き付けていた。


「臙XXX...どういうつもりだ?」殺気を込めた声が響く


「緋色... すまねぇな。俺は国王側へ付く」


「俺たちの大義はどうなる?目先の金に目が眩んだか?」


「金じゃねぇ... 俺はお前の陰に隠れるのが嫌になっただけだ。お前に付いていってどんなに良い事をしても褒められるのは俺じゃねぇ...お前だ!」


「...だから裏切るのか。 ...馬鹿野郎」


「緋色!私の事は気にせず王を討って!ここで諦めたらXXXXXXXア王国の未来は無いわ!」


XXXXXXXットが叫ぶ


「臙XXX!正直に言うぞ!俺は獣族が大嫌いだった!臭いし野蛮だしな。だけど考えが変わったんだ!何故か分かるか!お前に出会ったからだ!」


「...緋色」


獣の目が後悔の色に染まった。


「今なら、まだ間に合う戻って来い!!」


「もう無理なんだ...」


手を掲げた臙XXXの手のひらに血印があった。


それは、血印けついんによる国王との契約であり主従関係を意味していた。契約破棄は呪いの魔法による死を意味し、本人だけでなく血縁関係全て呪い殺す別名悪魔の契約と言われていた。


「臙XXX...お前って奴は...」


彼は血印を見て落胆した


「国王から俺がXXXXXXXア王国軍団長になる事を約束してくれた。俺たち獣族がこれで陽の目を見る事ができるんだ」


気付くと浅XXXと深XXXも捕らえられていた。


ここまでか...


「XXXXXXXア王よ、取引しないか?」


「取引だと?寝言は寝て言うんだな。どちらが有利な状況かわからないのか?」


王は自信ありげに言った。


「俺はあんたの“首”だけは獲る事が出来る。人質無視して今すぐ獲ってもいいんだぞ?」


彼は剣先を王の喉元へ更に前へ突き付けた。


「...取引条件は何だ?」


「XXXXXXットと浅XXX、深XXXを開放してくれ。そしたらあんたの首は繋がったままにしてやる」


王は暫く考えた後、こう言った。


「我に剣先を向けたのだ。その条件では周りの兵たちが納得しないだろう。誰かの命を差し出せ!それで手討ちにしてやろう。嫌ならその大義で私の首を獲るがよい」


王の目を見て確信する。


はったりじゃないな...


腐っても一国の王になるだけの事はある。甘く見ていたか...


何かを決意したように彼は言った。


「...いいだろう。では俺の命と交換だ」


中途半端な提示は交渉出来ず不利になる


「!?」


回りは予想外の言葉に一瞬静まりかえった。


彼女達が叫ぶ


「私達はいいから大義の為に国王の首を獲って!!」


彼は国王を見据えながら後ろにいる彼女たちに答える。


「俺は仲間が1人でも欠けたら大義は果たせないと思っている。臙XXXが裏切った時点で大義はを掲げる事が出来なくなった」


XXXXXXXXア王が叫び側近に指示を出す


「魔導士バXXXXXXを今すぐここへ呼べ!!」


「私ならここに...」床から声が聞こえた


床から上へ黒い影が伸びる。風貌はマントを被っていていかにも魔導士という風貌だった。


「ここにいたのなら話は分かるな?契約をするぞ」


「...かしこまりました」


1枚の魔法紙が置かれる。


契約内容はこうだった。


=======================================================================================


XXXXXXXア国王は契約によりXXXXXXXット、浅XXX、深XXX 3名の命を保証する。


ただし3名はXXXXXXXア王国から永久追放とする。


3名が結託しないよう転送魔法でランダムにより他国へ追放する。


本阿弥ほんあみ緋色は等価契約として命を絶つ事とする。


但し、彼は平行世界人である為実質の死に値しない。命を絶つだけでは等価契約にならない為彼の“XXXXXXXX”を喪失して平行世界へ逆転送する。


尚、契約を守らない場合契約不履行として違反した本人だけでなく血縁者まで呪いによって死の償いをする。

=======================================================================================


XXXXXXXア王が聞く


「契約内容に不満は無いか?」


「“XXXXXXXX”の喪失?俺に何をそこまで恐れている?」


「お前が2度とこの世界へ戻ってこれないように念には念をいれる必要がある。まぁ、平行世界へ逆転送された者が再びこの世界に戻ってきた事例は無いがな。それに、お前さえいなければ誰も逆らう者はいなくなる」


「俺が居なくても仲間がお前を獲りに行くだけだ」


「クックックック... はたしてそうかな? 哀れだな緋色殿。お決まりで聞いてやろう。俺の下で働かないか?臙XXXと同じようにそれなりの地位を保証するぞ?」


「寝言は寝て言え」


「血判を...」魔導士バXXXが契約書を差出す。


彼は躊躇なく血判を契約書に押す。そして後に続いてXXXXXXXア王も血判を押した。


「これで契約成立だ」


XXXXXXXア王が満足気に契約書を見て側近に耳打ちをする。


「このような契約は規約違反になる。息のかかった異世界管理役員へ根回ししておけ。それだけじゃないぞ、あいつの情報は国王権限で管理委員でも閲覧出来ないようにロックさせろ。あいつを担当した面接官、管理担当員は辞めさせろ。場合によっては殺しても構わないと言え。とにかくあいつに関わる情報全て闇に葬るんだ」


捕らえられた3人が解放され彼の元へ駆け寄る。


「XXXXXXXXXット、浅XXX、深XXX、これでお前たちの命は保証された。体勢を整えるまで暫く大人しくしているんだ。他の仲間にも伝えてくれ」


3人は泣きながら黙って頷いた。


XXXXXXXア王が冷酷に言う。


「では緋色殿、お前も契約を果たして貰うぞ?」


「契約は果たす。XXXXXXXア王、それに臙XXX。。。 俺は必ずお前逹の前に戻ってくる。必ずな」


王の前に彼は後ろ手に縛られ、膝き頭を垂れた。


「やれるものならやってみて欲しいものだ...殺れ!」


XXXXXXXア王が彼を見下ろして言った。


剣を持った兵が彼の首へ剣を振り下ろす。


全てが闇になった。


。。。。。。


。。



読み終わった後の感想は現実感がまるで無かった。

現実逃避したいが為に無意識の妄想が夢に出てきたのだろうか?


いよいよ心の病だなと思いメモは丸めて捨ててしまった。


今日も1件面接がある。急いでスーツに着替え面接する企業へ向かう。


乗り気で無い面接に行く足取りは重い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る