詩詩う。

林奈

あたたかい音

 あたたかい詩を、何かがそっと詠っている。


 それは、柔らかい寝息。

 囁かれたありがとうの言葉。

 思わず口ずさむメロディ。


 いつだって、誰だって、一人ぼっちだけど、それはいつでもそこにあって、僕たちをあたためてくれている。

 いつの間にか、僕には見えなくなってしまったけれど。


 誰かが練習しているリコーダーの音色。

 貨物列車のヒユウッという汽笛。

 窓を叩く雨。


 何かを見つめていた君も、本当は僕と一緒だったのだと気がついたけれど、それは少し遅すぎたみたいだ。

 今はそれらも、聞こえなくなってしまったんだ。


 春を告げる風。

 夏の終わりを告げる雷鳴。

 そして、音を飲み込む雪。


 僕のこの苦しかった気持ちも、そんな音と共に消えた。


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