第四章 最後の講義

 スクリーンには、プロジェクタによる画像が映し出されている。

 その前では、チームのリーダーが講義をしている。


 過去に、S県において発生したいじめ自殺事件では、当局の対応の遅れから、加害者児童の情報が全てネットに流出した。

 民事訴訟では、数千万円の損害賠償が命じられた。

 ネットに実名が晒されたことで、進学や就職も不可能となった。

 彼らは現在、消息不明とされているが、こちらの情報では、一人は自殺している。


(嘘である)


 このネット時代において、いじめは大変にリスキーな行為である。

 もし被害者が自殺でもした場合には、加害者の情報は全てネットに晒され、民事訴訟において、多額の賠償金が請求されるであろう。

 一度ネット上に情報が流出した場合、消すのは不可能である。

 進学、就職は諦めるしかない。恋愛、結婚も困難であろう。

 いじめという行為は、被害者のみならず、加害者の人生をも破壊するのである。


 リーダーは続ける。

 そもそも何故、被害者に執着し、いじめ行為に依存しなければならなかったのか。その点を考えてほしい。

 保護者は子供にもっと目を向けてほしい。

 時間をもっと有効に使ってほしい。


 介入はこれで終了する。

 チームは荷物をまとめて帰っていく。

 しかし、仕事はこれで終わりではない。膨大な資料をまとめ、報告書を作成しなくてはならない。

 また次の事案が、彼らを待っている。

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