第四章 加害者に対する聴取

 第三者に対しては、普通に聴取を行えばいい。

 しかし、加害者に対しては、それなりの準備とテクニックが必要となる。

 原則的に、加害者に対する聴取は、情報が十分に集まってからだ。

 証拠がない状態で加害者を呼びつけて問い質したところで、シラを切られるに決まっている。『証拠はあるんですか』と言われれば、それで終了する。

 ここでも順番が重要になる。

 聴取は弱い方から順番に実行していく。リーダー格は最後の方がいいだろう。

 一人ずつ証拠を突き付けて落としていく。外堀から徐々に埋めていくのだ。

 場合によっては放課後でもいいだろう。グループの分断にもつながる。


 調査官はプロである。いきなり詰め寄るようなことはしない。

 まずは生徒をリラックスさせて、何気ない話題から会話を始める。学校、友人、家族、趣味などなど、徐々に核心に迫っていく。

 罪を認めさせるとか、謝罪させる必要はない。より多くの証言と情報を引き出すことが重要になる。いじめ行為の詳細な日時、内容を聞き出す。この時点では、既に詳細を掴んでいるはずだ。


 スマートフォンや通信記録が入手出来れば解決が早いだろう。

 加害者に対する提出の義務化、或いは開示請求などは法的に可能であろうか。


 また、心理的要因にも迫る必要がある。何故、被害者に執着し、加虐行為に依存するのか。

彼らの動機は、何を恐れているのか。そのメカニズムを解明することが、真の解決に繋がるのだ。

 プロトコルでは被害者のみならず、加害者に対するケアも怠りなく行う。メンタルの問題を抱えているのは、被害者より加害者の方だからである。

 転向した加害者に対しても、保護措置を講じる必要があるかもしれない。


 どうしても彼らが事実を認めない場合は、それはそれで構わない。

 粛々と処分を実行するだけである。

 しかし、ほとんどの生徒は事実を認め、処分を留保する道を選ぶに違いない。

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