第1章:名探偵と美少女と召使い

 


何で真理亜ちゃんがこんなところに?

確かパパが心配するからって、お家に帰ったはずじゃ…。



「召使いさん、もしかして真理亜に会いに来てくれたんですか?」


「へ?会いにって…」


「真凛亜の家、すぐそこなんです。」


「へ?」



真凛亜ちゃんはそう言って、角を曲がった先にある一軒家を指差した。

赤瓦の屋根に白い外壁。

周りは良くある普通の一軒家が立ち並んでいるけど、この家だけ異質を放っている。

…西洋を意識した作りなのかな?

どことなく拘りを感じる。


豪華な作りに圧倒されていると、真凛亜ちゃんが突然、オレのズボンの裾をぐいっと引っ張ってきた。



「…?|真凛亜ちゃん…?」


「あの、ママ見つかりそうですか…?」



…微かに震えている手。

真理亜ちゃんの不安がズボン越しに伝わってくる。



「…だいじょうぶだよ」


「え…?」


「ママは、必ず探偵が見つけてくるよ。だから、心配しないで」



なるべく真凛亜ちゃんが怖がらないように、同じ目線になってオレは言った。


…正直、無責任なことを言ってしまった自覚ある。

けど、どうしても放ってはおけなかった。



「もちろん、オレも頑張るからさ。その、頼りないかもしれないけど」


「…そんなこと、ないです。召使いさんは、たよりなくなんかないですよ!」


「そ、そうかな?」


「はい!」



なんか、慰めるつもりがオレの方が真理亜ちゃんから宥められた感じだ。

さっきまで探偵のことで、あんなに苛々していたのに…。

そんな気持ちなんて、まるでなかったみたいにどこかへいってしまった。


それに苛々が治まって冷静になったおかげなのか、あることも思い出すことが出来た。


ーそう、写真のことだけじゃない。

パパさんについて、オレは真凛亜ちゃんにも聞きたいことがあったんだ。



「あっところで、お家に入ってなくて大丈夫なの?パパさんに怒られたりしない?」


「パパ…ですか?」


「うん、パパさんお家にいるんだよね?会って、お話することって出来るかな」



オレがそう尋ねると、真凛亜ちゃんは何やら不思議な顔をしてこう言った。




「えっと……パパは、その、誰とも会いませんよ?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る