第19話 私が貴方を守るの
2日目は昨日行けなかった買い出しだが、どうにもバルトルトが先生がこの街にいることを警戒して行くことをしぶり結局メイナード家の使用人の人に買い出しを頼んでしまった。
しかし快く引き受けてくれた。
やることが無くなったのでバルトルトは伯爵家にある書庫へ行き本を読むことにしたらしい。
私はキッチンへ行きシェフに料理を習うことにした。
そこで…気付く。
「あれ?食事が三つ…ダメですよ?お嬢様の分は…」
と私が注意すると
「あ、ああ、すまない間違えたんだ!はは…」
と笑って皿を避けた。
「ネクロマンサーってすげえのな!本当にお嬢様が生きかえちまってよう!」
「生き返った…とは少し違うと思いますけど…」
バルトルトは身体は死んでいると言っていたし。でもやはり本人の身体だしそう見えても不思議はないか。
夕方になると私はバルトルトの分の食事も持って部屋に行く。ノックすると開けてくれる。
「もうすぐ買い出しを頼んだ奴が帰ってくるな。明日で最後だし荷物も纏めておかなければな」
とスープを飲みながら言う。
「そうですね。明日森へ帰るんですもの」
と私も生ハムとチーズを口に入れる。
するとトントンとノックがして買い出しを頼んでいた人が戻ってきたようだ。私は立ち上がり扉を躊躇なく開けた。
そして固まった。
「やあ!!」
「!!」
扉を開けたら何故か荷物を持ったロイ先生がいて思わず私はバタンと閉めた!
バルトルトの方を見ると顔が真っ青になっている!!
トントンとノックされロイ先生の声がした。
「ちょっと酷いなぁ!折角君に会いに来たのにさあ?……街でメイナード伯爵家の方とお会いして買い物荷物が君達のだと知って私もこうして手伝ってあげたんだ。ここを開けてくれないかな?」
と涼しい声がする。
「では私はこれで」
と側にいた使用人の人は去ったようだ。
バルトルトはガタガタ震え出した。
私は扉の外から
「あの…ロイ先生?荷物を置いて帰っていただきたいのですが。バルトルトさんは貴方にお会いしたくないみたいです」
と言うと一瞬沈黙の後、バンと扉に拳を当てる音がした。
「なんなんだい?君は?彼の恋人だって?ははは!彼はね?女の人が嫌いなんだよ?困らせるのは君の方。出て行くのは君の方だ!
ねぇ、バルトルト王子…聞こえてますよね?私の声が!ずっと探してたんですよ?貴方を!
また私に頼るといい!そんな女なんかよりもね!!」
と言い、またバンバンと扉を叩き始めた。恐怖しかない。
バンバンバン!
ガチャガチャガチャ!
「うう、やめろ…」
と青ざめて震えるバルトルトに私はクッションを少し破り綿を少し丸めてバルトルトの耳にはめ込んで更に布団をかけた。
「ちょっと!人の家の扉をバンバン叩かないでくださる!?ロイ先生?貴方気が狂ってますよ!?バルトルトさんが怯えてるから帰ってください!彼は貴方なんか好きじゃないんです!彼の中で貴方は要注意人物です!変態さん!」
と私は言ってやると
「貴様…殺してやる!王子と私を引き裂く者は容赦しない!!」
その怒りに満ちた声にゾッとする。そして荷物を荒らしグチャグチャに靴で潰す音がしだした!!
グチャッ!ベキッ!
グリグリ!ガンガン!
ビリビリ!バリバリ!!
「ちょっと!!何するのよ!」
「ははは!こんなもの!!要らないだろう!?バルトルト王子はこれから私と暮らすんだ!君を殺してね!」
グチャグチャと荷物が潰される音に私は怒りが湧いてくる。買い出しの食料達が可哀想!それにお金だって少ししかないのに!!
私は部屋を見渡した。何か武器になるもの…。
するとバルトルトの荷物に短剣が入ってるのを見つける。それを手にした。
バルトルトは布団を被っているから大丈夫。怖いことは何もない!私が貴方を守るからね!
ゆっくり扉に近づく。
殺されるもんですか!
しかしそこで…階下から悲鳴が聞こえた。
荷物を踏むのをやめたロイ先生は外で
「何だ!?今の悲鳴は!?」
と流石に異常に気付いた。
するとバルトルトが布団から出てきた。耳栓を外して…。
「バカめ…あの夫婦…やりやがった…」
「え!?」
と聞くとバルトルトは私の手を取った。
「扉を開けるな!絶対にだ!」
と私の事を抱きしめる。
ええ!?
何が起こったの?
すると…何かズルズルと階段を這い上がる音がした。
ロイ先生は
「な、何だ!?あれは!!?」
と怯えた声を出す。
「……バケモノになった娘だろうな。夫婦が…食い物を与えて…更に娘が血を欲したから…奴らはその通りにしたんだろう……つまり夫婦は娘に喰われちまった…バカな事を!」
とバルトルトは言った!
「ひ!!バケモノめ!来るな!!」
ロイ先生は流石に逃げ出したようで他の部屋に逃げ込んだようだ。ズルズルと音が部屋の前で聞こえた。
バルトルトは扉の前に陣を描き呪文を唱え合図したら開けろと私に言う。魂の強制送還だ。
私は部屋の外の恐ろしい気配を感じつつも扉に手をかける。
そして今だとバルトルトが合図し、扉を開ける。
そこには赤い目をした娘らしきバケモノがいた!口から血を流し髪を振り乱しその姿はまさにバケモノだ。
『肉…にく…』
と言い続けて陣に身体が入った瞬間バルトルトが
「我ネクロマンサーが与えし身体より魂との分離をせよ!!貴様のあるべき場所へと帰れ!!」
バルトルトが詠唱し終わると娘のバケモノが苦しみだし黒い何かが娘から出てきた!
そして娘はバタンと倒れ魂は陣の方に吸い込まれていく。
『ああああああああああああああああ』
と叫び娘の魂は陣の中へと消えていく。
そして静けさが訪れた後…側の部屋からロイ先生が出てきてバルトルトはビクリとした。
「やあ、凄いね!これ王子が!?闇の属性魔法が使えるのは知っていたけど…ここまでとは!流石私の王子だ!」
とこっちに来ようとした!
「来ないで!」
私は短剣を突き出すとニヤリと笑われる。
「全く邪魔なお嬢さんだな!私と王子の愛を、そんなもので邪魔できると!?」
「貴方みたいな変態には彼を渡さないわ!さあ、帰って!……伯爵達の事だって知らせないと…」
目の前に倒れる死体に目をやるロイ先生は
「わかったよ。一旦引くとしよう。だがまた必ず君を迎えに行くからね?バルトルト王子!」
と恍惚な顔をした。うわ!キモ!
「……二度と会いたくない!」
とバルトルトは言っていたがロイ先生はひらりと手を振り階下へキザったらしく降りていくが途中で
「ギャア!!…うわっ!!ひ、ひいいいっ!」
と悲鳴を上げていた。
たぶん階下ではバケモノになった娘さんに喰われた人達の残骸があるのだろう。
私もこの後悲鳴を上げつつも密告という形で憲兵さんを呼ぶことになるのだけど。
だって憲兵さんに聞かれると私達が犯人だと言ってるようなものだし。
ともかく今回前金を少し貰ったが買い出しで少し使い、それもロイ先生が台無しにしてしまったので報酬はほとんど貰えなく森へ帰ることとなった。
バルトルトは私と無言で死霊の馬車に乗り込み誰にも見られないよう夜を選んで帰った。
顔はやはり青かった。
でも一言
「ヨハンナ…ありがとう」
と消え入りそうにそう言った。
私は
「私は大丈夫。バルトルトさんこそ酷い顔!帰ったらあったかいミルクを入れますね」
と言うと
「ああ…」
と黙り込んだままそれきりだ。
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