第8話 出会い episode3

病原ウイルスは、人体に。人類に大きな傷跡を残し、その勢力を抑制された。


ひとDNAに傷。いや変化を……書き換えたというべきだろうか。

出生に大きな影響を及ぼし始めていたのだ。


生まれ来る次世代の人間。その人間のDNAは世代を重ねるごとに、顕著にその概略が表れてきたのだ。

ウイルスの一応の終息を経てから1世紀もたたぬ間に、人類は存亡の危機に立たされる。

種族の維持ができなくなるという危惧だ。


3世代目に生まれてきた子供たちには、生殖機能のない。いわば性別のない子供たちが生まれていた。

このままいけば、人類は人間という生物を絶滅危惧種として、登録しなければいけないところまで追い込まれていたのだ。


当時のスーパーコンピュータの計算では、人類がこの地球上で反映できるために残された時間はあと90年と示した。

科学者たちはこぞってこの問題に取り組み、人としての生物学的存続の研究に向かった。

その中でも最も活発に開発が重視され勧められたのが、AIによる疑似人類の創設であった。


この領域に関しては世界的に禁止事項目に値する研究であったが、種の存続を諦めた時のための保険として、新たな人類の存続を目指した研究として進められたのだ。


しかし、急速にAI機能を覚醒させた科学者たちは、ある限界点においてAIと言う機能を放棄し始めた。

なぜなら、AIがはじき出した志向は人間としての思考とは異なるものだったからだ。

それは、異なるものではなく、人間の脳の限界点を超えた志向をAIが自己主張したからだ。


当然人間の脳では理解できないことを主張されれば、それを脳は拒否をし始める。結果AIは使い物にならない機能として、感情利潤判断をしてしまったのだった。


その結果急速にAIという存在は人々の中から消え失せていく。


だが、これまでのアーカイブは残されたままだった。

AIは人類から見放され自己の利潤判断の元、増殖を繰り返し、完全なる独立した新たなる人類像を作り上げた。


AIは何も間違った道を歩んだわけではない。初めにマスターとなる人類が与えた問題を、忠実に演算し独自の思考を交えた結果を与えだしただけだった。


そして、この地球上でもっとも長きにわたって繁栄し続けた人類の種の保存を遂行する。


コールドスリープ。


健全なる生殖機能を有する10代までの男女を、半強制的に種の保存という名目で、肉体をコールドスリープさせたのだ。

ただし、脳内にある記憶、感情。身体的処理反応などは、すべて個人の電子頭脳としてアーカイブ化された。


肉体も脳の機能もすべて凍結されてしまう。でなければ、人体の劣化は抑えられなかった。しかし、蘇生されたときに、その記憶及び身体反応が消失されずに残ている可能性は極めて低いと判断したAIは、個人の脳内を電子化データ化し、アーカイブ保存をした。


汎用AI機能を付加させた記憶媒体は、アーカイブから必要なデータを抽出し、メインAIが創り出した階層の仮想世界で活動を行えるようにした。

つまりは脳内をデータ化し、仮想世界にて生き続けるという権利を与えたのだ。


仮想世界・生存・権利。Virtual world Survival Right. 略称はVSR。


そう、この俺、柳澤泉やなぎいずみと、妹の柳澤映美羅やなぎえみらの本当の肉体は今、どこぞのカプセルで安らかに眠っているはずだ。


そして、このくだらない任務に、俺たちの脳データは駆り出されているという訳だ。

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