第7話 出会い episode2
パンパン。
何一つ表情を変えず。無表情っていうのですかねぇ。
女子高生のビジョンは砂が崩れ落ちるように消え去る。
「おにぃ、まだ鼻の下長くしてんのぉ? いい加減デレってするのやめようよ。こんなにもかわいい妹がそばにいるんだからさ。でさぁ、どうなってんのよ! ゲートが開かないって。このままだと切りないよ。私達バグに寄生されちゃうんだけど……やだなぁ」
「いやいや、それはこっちもごめんこうむりたいんですけどねぇ。アラートの連続だし、センターさんには問い合わせてんだけど、返事来ないしお兄ちゃん、ちょっとピンチなんですけど」
「マジ! ていうかさぁ、もしかして私達、旨い事いいように使われたりしていない?」
「というのは? 映美羅さん」
「だからさぁ、バグ駆除に駆り出されたんじゃなくてって言ってんのよ!」
パンパンパンパ!!
「あっ、なるほどねぇ。……ドンピシャだわ。この階層のバグ駆除依頼が出てる」
「てことは駆除しないとゲートも開かないっていうことなの?」
「みたいですねぇ。マジ、上の奴らの考えエグイんですけど」
「てかさぁ、おにぃ今回の依頼指示ちゃんと目を通したの?」
「一応は……。ただ東京に向かえとしか指示されていないんだけど」
「ただそれだけ? その時点で疑おうよ! おにぃ」
そうなのだ表向きの任務は東京に向かうこと。そして俺にはもう一つ裏の任務が与えられていた。
日本国北東北エリア第4支部106部隊。
まるで軍隊のようだが、実は軍隊ではない。……と、上の奴らは言っているがまさしく軍隊だ。
組織というものを組むのには、この形式が一番統制が取れやすいということらしいんだが、そして実際やらされていることは戦闘だ。
この世界の中で俺たちは、地球外生命体……と、言えばかなぁーりかっこいいんだけど! 実際はそう、こうして
……世界。
今、俺たちがいるこのは仮想世界という空間だ。
リアルワールドで実際に稼働している人類は、ごく少数の人間だけが存在しているとだけしか聞かされていない。
もっとも、俺たちはその人たちに直接触れるという出会いはない。
なぜなら今の俺たちもデータの一部として、この仮想世界に投入されているからだ。
2020年、この年が人類において一つのターニングポイントとなった。
突如として全世界に広まったウイルス。
その加速度は今までに類を見ないものだった。瞬く間に多くの人間はこのウイルスに感染し、多くの命が奪われた。
過去にも天然痘などのウイルス病原体の流行を経験している人類ではあるが、今回蔓延したウイルスは今までとは性質が異なっていた。
それは人間に絶えず順応するためにウイルス自体が変異し続けたという点だ。
まるでウイルス自体が自己意識を持ち、対抗する人類に戦いを挑んでいるかのようにも思えるほどだった。
この戦いはさほど長くは続かないものだと軽視されていたが、結果、一応の終息を終えたのが、蔓延してからおよそ10年の歳月が経過してからだった。
だが、この10年間の間に人類は、種の存続の重大な危機を向かい受けようとは思ってもいなかった。
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