第6話 出会い episode1

カタンカタン。電車の小気味よい音と振動。一気に睡魔に襲われる。

と、先にもう襲われている妹の寝顔を横目で見ながら

「やっぱかわいいじゃんか」

などと、ひそかに心想いを口にする。


ガタン、ひときわ大きく揺れた車体。その拍子に映美羅えみらの頭が俺の肩に乗る。

ふんわりといい香りが洟に漂ってくる。


「こいつシャンプー変えたか?」


クンクンと、妹の髪から漂う香りを堪能しながらも、向かいに座る女子高生を視界に入れている。

なんで都会の電車はこう、向かい合わせの長椅子ばかりなんだ。

俺は今まで、電車と言えば4人掛けの対面座席しか記憶にないのだが。

しかしなんだ。やっぱ、東京の女子高生というのは制服着ていてもなんか違う。なんだろう。子供っぽさがないのか、大人の雰囲気が漂うというのか、色気があるわな。


基、俺もこいつも一応は現役の高校生なんだが、東北の田舎から上京したての俺らはどこか、”もへら”とした感じがする。

だが妹はかわいい。

これは譲れない事実だ!

でも、……やっぱり都会の女子高生はいい。


「ちょっと、おにぃ。きもいんですけど!」

「はぁ~? 何がきもいって?」


「妹の髪のにおいを堪能しながら、向かいに座る女子高生の姿に見とれてよだれを垂らしているだらしのない、兄に”きもい”という言葉以外見つからないんですけど」

「はいはい、どうせお兄さんは”きもい”んですけど。そのきもいお兄さんにいつもべったりなのは、どちら様なんでしょうかねぇ」


「う――――――――っ! そこんとこつつくなんて、ほんとデリカシーないんだよねぇ。おにぃはさ」

「はいはい、でさぁ。駅に着く前でなんだけど、そろそろやばくねぇ、この電車降りねぇと」

「だねぇ――――、ちょぉ―っと、やばいかも」

ふと前を見れば俺たちは、電車に居合わせた人たちに囲まれていた。

スッと、腰に付けた日本刀のさやに手を添え

バサッ!

「まずは一匹目と」


目の前に群がる人? 人の形に見えるんだが、実はこれがまた違うんだなぁ。

なんで、そんなのわかりきってることだよ。

この世界には……………今、俺と、妹の映美羅えみらしか……居ねぇからだよ。


バサ、「二匹目と」


「あのさぁ、おにぃ。こんな時になんだけどさぁ」

「ほいほいなんだい? 妹よ」

「なんで私ら、竜宮なんておったてる東京に来なきゃいけないのよ」

パン! 映美羅えみらが撃つ銃声が車内に響く。


「さぁ、なんででしょう。優秀かつ美男子のこの僕にもよくわからないんだけど」

「ぷっ、美男子? 誰が? まぁ百歩譲って優秀なのは認めるけどさぁ」


パンパン! バサッ!


「うれしいねぇ、そこんとこもう少し妥協してくれないかなぁ」

「……ま、いいけど。でもそろそろマジやばいんじゃない?」

「まぁねぇ、そうかも知んねぇな」


「そんじゃそろそろ離脱しますか? おにぃ!」

「そうしますかぁ。可愛い妹にこれ以上労働をさせたら、おにいちゃんの心が痛むし」

フロートパネルにゲート召喚のアクセスキーをインストールする。

しかし、無情にもアクセスキーは弾かれアラートが発せられた。


「あれぇ? 変だなぁ」

「どうしたのおにぃ?」

「ゲートにアクセス出来ねぇ」

「マジ! ちょっとそれってやばいんじゃないの?」


「ほんとまじやべぇわ!」



車内に群がる瑕疵かし。いわゆるバグ。


その時、向かいに座っていた。かわいらしい女子高生が牙をむく。

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