第三章 その四 あのー

腑に落ちないままドワーフを後にする私と鳴神。この日の帰り道もやはりクレープ屋台の姿は無かった。


「マージかよぉ、どこ行ったんだよ俺のクレープ。」


別にお前のクレープでは無いがな。でもいよいよヤバイぞ、大町さんの話じゃ今のお前の悪霊成敗パワーがダダ漏れの状態らしい。それを苺クレープが抑えてくれるのかどうかはまだ仮説だが、このままだと私も浄化されてしまう。


「それは構わねえけどクレープが無いのはマジでキツい・・・。」


私だってお前がクレープ食えないのはどうでもいいけど消えたく無いんだよ。私にはまだやらなきゃならない事があるんだ。


「あー、お前が死んでる分際で惚れた女の話か。」


言葉を選ぶという作業は無いのか。


「お前何年探してんだよ。っつうかもう霊能力ゲットしたんだから勝手に探しに行けよ。」


・・・いや、そうなんだがな。ちょっと前に気付いたんだが・・・。


「なんだよ。」


お前に取り憑いたはいいんだが、これが・・・一回取り憑くとな、その・・・自分ではこう・・・自由に『解除出来ない』らしくてな。


「はっ!?お前じゃあずっと俺に憑いてるつもりかよっ!」


だから!!だから言いたくなかったんだ!ファイティングポーズを止めろ!!お前に言うと殴るから!!


「当たり前だっ!!何勝手に取り憑いて後戻り出来なくなってんだよ!!」


困ってんのは私も一緒だ!あの人の事件を追う為にお前に取り憑いたのに、取り憑いたままじゃ何にも出来ないし、挙句クレープ食べられないからこのままじゃ私は消えるかもしれないんだぞ!?もう何の為にお前に憑いたのか分からんくなる!!


「知るか!!!俺には何のメリットも無ぇだろうがっ!!!」


何を!!!貴様のような傍若無人の馬鹿に適切なアドバイスを与えられるのは私だけだろ!一緒に居てやる事に少しは感謝しろ!!


「・・・あのー。」


「何で感謝しなきゃなんねぇんだよ!お前のアドバイスなんざ一回だって聞いた事無ぇだろ!」


胸張って言う事か!


「あのー、すいません・・・。」


『何だよ!』と鳴神と私が同時に振り向くと、そこには首だけの老人が目の前に浮いていた。


「ケンカの最中ごめんなさいね、あの、私の身体、知りませんかね?」


それはコンビニに捨てられていた被害者だった。

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