第三章 その三 システム

「それ、なんとかなんねぇんすかねぇ。」


鳴神は同意を求めるような目で私を見ながらそう呟いた。分かるよ、私も肉体があったらなんとかしたいところだ。まぁ、肉体があってもなんとも出来ない事なのだろうが、これは私がだから。


簡単に想像出来ると思う。この安全・平和ボケした日本で『万が一困った事が起きたら誰に頼る?』となると結局は、


『警察に頼る』


が最初に来る。「警察呼ぶぞ!」「おまわりさーん!」と、この国の殆どの国民は警察と言う存在に信頼を置いている。皆、その警察が『何の役にも立たなかったら』と言う仮定など微塵も立てないように。

何かを盗まれた、誰かに傷つけられた、家族が居なくなったなどなど、それが純粋に人間社会の事件かかなど関係無く、最初に相談する相手は常に警察なのだ。でもその相談が後者であった場合、彼らの解決能力は『ゼロに等しい』のだ。


「毎回だけど、腹立つよなぁ。」


新屋敷は笑いながらそう言うが、そのシステムは本当に腹の立つものだ。先の『無期未解決事案調査室』というあやかし専門の部署ですら、実際のところのだ。


数多く寄せられる通報の中、「あ、これは人間では解決出来ないな。」と言う事件は全て無期未解決事案調査室に回される。そして更にその中で、


『世間的に警察が解決した方がいい事件』


を見繕い、それを我々のような『業者』に丸投げしてくるのだ。


「その丸投げがムカつくんだよ。アイツらマジで何もしねぇからよ。」


そうなのだ、彼らは基本何もしない。と、言うより何も出来ないのだ。いくらあやかし専門部署とは言え、その中に霊能力者が1人も居ないのだ。ここが何とも御役所らしいと言えば御役所らしい。面倒な事件と面倒な人材を集めておいて見て見ぬふりするだけの部署、それが『無期未解決事案調査室』なのだ。そしてそこに寄せられた大半の事件は文字通り『無期未解決』となり、その被害者や被害者家族達が、


「警察に言っても何もしてくれないので・・・。」


と、ここに訪れる。つまり新屋敷の言った、


『結局全部』


我々が手を下す事になるのだ。

警察が安値で持ち込む案件は政治絡みやマスコミで騒がれている物だけ。高額の依頼料を払って下さるそれ以外の依頼人はと言う、何ともやりきれないシステムなのだ。

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