第24話 受賞作で1番多いストーリーは?
ライトノベルは『これが書けていれば受賞に近づける』という要素があります。
それは『王道的なストーリー』です。
これも、「え、当たり前じゃん、今さら言うまでもないことだ」と、思う方もいるかもしれません。
しかし王道的なストーリーはほぼ全ての物語に応用出来るものであり、王道が出来れば変化球的な話も書けます。
スポーツで言えば、ストレートを投げる練習と、カーブやスライダーを投げる練習、どちらを先に行うべきか?
当然、基本であるストレートです。
ライトノベルもこれは同じ。
王道が出来れば他の技能も得やすくなります。また、王道は言い換えれば『多くの人に共感されやすい・理解されやすい』というものなので、部分的にも必要です。
キャラも特殊、ストーリーも特殊、世界観も特殊では、読者は疲れてしまいます。
少なくともどれか一つは王道を入れないと、まず面白いとは思えません。キワモノ扱いされて終わりです。
なので、王道は重要となります。その中でも、受賞作では『王道的なストーリー』が高い評価を得る傾向にあります。
これまで何度か述べた作品、『86』は、世界観は独自の用語が多いですが、ストーリー自体は基本的に王道的です。
人類の驚異となる敵がいて、主人公たちはそれを倒すために戦う。
主人公たちは劣勢の状況にあり、なんとかそれに抗っている。
SF兵器や技術で独自性を得ていますが、ストーリー自体はシンプル。なので、読者は話の内容に集中することが出来ます。
(独自用語が続くので、序盤はきついと思う読者もいるかと思いますが、大まかなストーリーは王道的)
他にも、『ブービージョッキー』、『千歳くんはラムネ瓶のなか』、『声優ラジオのウラオモテ』など、それぞれスランプに陥った主人公の復活劇、学校での問題を抱えた高校生を救う物語、仲の悪い二人が共同作業を通じて心を通わせるという、王道的な流れを踏んでいます。
一部、特殊な技術や設定を使うことで差別化していますが、ストーリーに関しては王道的です。
わかりやすく、盛り上げやすい話だからこそ、読む側も熱中出来るのですね。
ただ、一方でアマチュアとなると、私が今まで作家志望の方の読んできた限り、王道をきちんと書けている作品は滅多にありません。
部分部分で『王道要素』を入れている作品はありますが、それはあくまで『王道要素』です。王道的なストーリーではありません。
何が違うのか?
王道要素は要するに、要素で言えば、ツンデレ、妹、バトル、二つの組織の対立、主人公の特別な過去など。
それだけを一部だけ入れているものが多いです。
ツンデレキャラがけっこういるからそれを入れておこう、妹が流行っているらしいから入れておこう、主人公が特別な出自が良いからそれを入れておこう、といった具合ですね。
たまに勘違いする方を見かけるのですが、ライトノベルは『これを入れれば大丈夫』というものはありません。
ツンデレも妹も、特殊な主人公の過去も、『その要素を入れれば必ず人気が出るものではなく』、それを生かした『ストーリー』にしなければ人気は出ません。
王道ストーリーは色々とあるとは思いますが、
『仲の悪いメインキャラが協力していく』
『弱い主人公またはヒロインが成長する』
『主人公とヒロインが恋愛関係に至る』
の三つが王道中の王道ストーリーでしょうか。
新人賞を取った作品は、このどれかに属するものが大半だと思います。
前述した作品などがわかりやすい例ですね。
ごく最近であれば、ファンタジア文庫の『VTuberのエンディング、買い取ります。』などもこの分類になります。
弱いヒロイン、あるいは不遇なヒロインを、主人公が助けていくストーリー。
出来なかったことが出来るようになる。不幸だったけれど幸せになる。
これは普遍性のある、王道的なストーリーの一つと言えます。
つまり、感動しやすい。
王道なストーリーを書くことが出来れば、その周りを独自に設定で固められる。
魅力あるキャラで引っ張ることも出来る。あるいは、王道を逆手に取り、予想外のどんでん返しで読む側を驚かせることも出来るでしょう。
何度も送って落選してしまう方は、一度王道なストーリーを書いてみてください。
そこから見えてくるものがあると思います。
次回、具体的な王道のストーリーについて述べます。
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