再設定

能力は魂の力によって生じる現象であり、魂がなければ能力を使うことはできない。魂を失い魂を求めて彷徨う「亡者」は魂がないため能力を使うことができない。そもそも魂がなくても存在自体は可能である。そして魂を失っても尚「亡者」にならない者もいる。でもそんな人間は存在しないのが創造主が創造した異世界。この創造世界に招かれる条件は「欲深い」者だと限定をするならば「亡者」になる条件を「魂を失った者」でありながらまた「欲深い」者であるとする。すると「亡者」にならない理由がこの異世界から消滅する。「亡者」は失った魂を求め続ける。それが「欲深い」のだ。失った理由が何にせよ、無理に求め続けるという行為に意味がある。そもそも「亡者」が何故そこまで魂を求めるのか。魂がなければ能力が使えない。能力が使えないということに問題があったのだ。この異世界では能力こそが自分の唯一の価値となる。自分の価値を失えば居場所を失う。全てを再び失うことになる。それが嫌で嫌で理性を失ってまで「亡者」は魂を求める。それはどこまでも「欲深」かった。異世界には「生」と「死」の概念がない。だってみんなもう死んでるんだから。あるのは自分という存在、もはや自分自体が概念のようになっていた。


そもそも創造主は何故この異世界を創造したのか。そもそも異世界ってなんなのか。異世界の意味は「通常と異なる世界」を指す。死者を集めて出来上がった世界が普通なわけがない。世界自体存在しないもの、概念だけのようなものでもある。この異世界って何処に位置しているのか。どこにもないんだよな。あるとしたら創造主の腹の中、つまり死者の魂は創造主に食われてたってことになる。魂を問答無用で招待し異世界に連れていく、というのは問答無用で飲み込んでいた。肉体という器を失った魂は抵抗もできない、逃げるすべもない。最初から無理な話だった。


創造主が人間ではない「妖」なんだって設定は過去に作ったオリジナルキャラクターである「夜影」をそのまま使用するつもりで持ってきた。といっても細かな設定は曖昧だったりするので新しい設定を入れたりもする。創造主である「夜影」にとってこの異世界を創造するのはゴールじゃなくて通過点に過ぎなかった。そもそも「夜影」が産まれた原因の設定とつじつま合わせで設定をしていかなくてはならない。


「幼い少女は事故で母親を亡くす。その後そのショックにより父親が自宅で首つり自殺をした。少女はとある孤児保護施設で暮らすことになった。」が始まり。この時の「夜影」はまだ「夜影」ではないので「夜影」をAと表記する。Aが施設に入れられたとことから親戚など引き取ってくれる場所も人もいなかった。そもそも子供がいるのに父親が後追い自殺をしている時点であまりAのいた環境は最初からいい状態じゃなかった。Aは施設に入れられたがこの施設は保護した孤児を研究所へ流していた。これにも理由があって、孤児を保護し続けることがそもそも無理があったんだよね。いづれ成長して大人になるそれまで育てる余裕もなかった。それどころか孤児を引き取ってくれる里親なんて現れるわけがなかった。その理由はそんな余裕がどこにもなかったから。Aを引き取る宛がないのもそんな余裕がなかったからだし父親が迷いなく首を吊ったのも追いつめられていたから死へ逃げた。可哀想とか感情で誰かを救う余裕が全体的になかった。そんな状況を打破するべく研究している研究所に保護施設は孤児を流していた。孤児だからどうなっても問題ないだろうって考えがあったし孤児を放置するわけにもいかなかったからこれが彼らにとっての最善策なんだよね。この研究所にクロームと関係があった。クロームは人物設定上にあるように自分でさえ実験体にした人間だ。ここで一回クロームと創造主であるAは接触しているんだけどお互いこれを知るのはかなり後。研究所でAはクロームによって実験体にされる。Aは研究所で実験体になる順番待ちをしている間に気づいていた。だからってどうすることもできないし逃げようともしていなかった。Aは諦めていた。そもそも父親が死んだあたりで人生の諦めに入ってた。実験体にされるときも抵抗一切しなかったし完全に身を委ねていた。クロームからすれば最高の実験体だった。そして初めて実験は成功する。ただ、そこでAはただの幼い少女であることをやめることとなった。ここでAは化け物になってた。「妖」になってた。Aこそが「妖」の最初の一人でありこの実験の最初の成功体。そしてクロームがAを「妖」にした原因。全てはここから始まった。実験の詳しい内容を設定していこう。


実験の内容はとある鉱石から得られるエネルギーを使って人を進化させられないか、そういうもの。何故人間の進化が必要だったのか。進化には二つほど理由付けができる。①人間兵器を作り戦争に勝とうとした。②人間が住める環境ではなくなってきているため人間を進化させることでその環境下でも生存できるようにしたかった。この二つがあるけどその二つともクロームがやりたがる内容じゃない。そしてこのどちらでも良かった。いっそ両方だろう。人間が住める環境である範囲が狭まったことで発生した争いの終止符、そして環境に適応するための方法。この二つが必要だった。それを天才研究家であるクロームに託された。クロームも流石に自分の生存がかかっているから研究を進める。その時とある鉱石が発見された。その鉱石を調べてこれが使えるかもしれないと考え人体実験へ。そしてAで成功してしまった。この鉱石を発見したのはまさかのモグラ。珍しい鉱石を発見してそれを売ったらそこまで発展してしまった。これをモグラたちが知るのもだいぶ後。この鉱石の力は魂の力とは全く関係ない。多少は魂にさえ影響を与えているとしてもそれはAにのみ。その後同じようにやってもまったく実験は成功しなかった。鉱石の力が強すぎて実験体が耐え切れず全員死亡する。この鉱石の名称は「妖石」とする。そして「妖石」から取り出した力を「原妖力」と命名。偶然Aがその強い力に耐えただけだった。クロームは「原妖力」を薄めた「妖力」を使って再び実験を行った。成功率は五分五分。薄めたっていうか使う力の量を減らした。ただその成功体とAとはかなりの差が生じた。この時失敗体の魂をAは自分の中に取り込んでいた。終始Aは大人しかったため失敗体が一時的に保管される部屋にさえ出入りできるくらいには自由があった。というか協力的だったんだよね。「妖化」してから知能が高くなったり身体能力が上昇したりで研究所の事情を理解できるくらいにはなっていた。


「妖化」したことによって寿命という概念を失う。時間がほぼ止まった状態。暇な時間を使って自分が何ができるのかをAは探し始める。それはクロームを喜ばせたが、そんなことはどうでもいい。珍しい鉱石を売ったはいいもののモグラは貧しい生活からの脱出はできなかった。この時その鉱石の価値がわかっていたのはクロームくらいだったから。ただの綺麗な石程度にしか見られなかった。


Aが研究所で名付けられたのは「ゼロ」だった。クロームらしい数字。モグラもクロームも名前に興味が無いのは一緒。ちなみにクロームは自己紹介を元素記号でしてくる。モグラは本名ではなくあだ名をそのまま名乗る。だからこの時点ではモグラもまだモグラじゃなかった。Aが「妖化」する前の本名はモグラ同様もうわからない。本人でさえやっぱり名前に興味がなかったし長いこと自分の名前を呼ぶ人がいなくてやがて忘れていった。そのモグラとAと同じであったはずのクローム何故自分の名前を忘れなかったか。元素記号がどうのではなく自称天才研究家でありながら周囲にも天才研究家であることは認められていたしだからこそ託されているのだが、クロームの名を呼ぶ人なんて沢山いたから。忘れようがなかったから。呼ばれればそれが自分を指すのだと嫌でも再認識するから。モグラの場合は本名じゃなくてあだ名ばかり呼ばれていたせい。Aでさえモグラを本名で読んだことがなかった。モグラがモグラと自ら名乗り出してからやっとあだ名で呼び始めた。いや、寧ろ、お互い名前でお互いを呼び合うなんてことをしてこなかった。


Aは「妖化」してからクロームに「ゼロ」と名付けられておいて結局Aの前でクロームが「ゼロ」とほぼ呼ばなかったからAはその名前すら忘れる。というか名付けられたことすらもわかっていたかも危うい勢い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る