形成

魂だけの姿で肉体という器はない。それ故にモグラたちは容姿を好きに変形し続けることができる。それが本当に好みに合わせて変えているかというと100%そうではない。基本的には自分が生前認識していた容姿になる。ただ長く異世界に居ると生前の記憶が消えていきその容姿を保ち続けることが難しくなりいつしか変形していく。それを本人が気付く術はなく、容姿が人間離れしていく。モグラやクロームは特に生前から自分の容姿を認識することがまずない。モグラは鏡などで容姿を確認できる余裕もないし自分の見た目など気にしている余裕もなかった。クロームは自分の容姿なぞ興味がなかった。この2人は変形が激しく生前の姿からかけ離れている。


創造主は彼らの姿を創造主の思い通りに変形することができた。クロームやモグラのような自らに無関心で認識が薄ければ薄いほどにそれが可能だ。


異世界は創造主の中に形成されている。異世界=創造主の妄想。異世界に来たということは創造主の力の一部となった、創造主とほとんど一体になっている状態。創造主は異世界を創造するのに使っている力はほとんどかかってない。魂は夢を見ているような感覚。創造主は魂を肉体という器に移すことでその人物を蘇生することができ、それは創造主自身でも行っていること。この時現実に存在しているのは創造主だけになる。創造主が必要と思えば肉体さえ手に入ればモグラたちを蘇生し現実へ連れ戻すことができる。ただし器がある状態では自分の容姿を変形させることも、能力を使うこともできない。異世界で能力が使えるのは創造主の妄想範囲内に留めて能力の発動を夢見させているから。現実で能力を発揮するためには器があってはならない。しかし器がない状態で魂が現実で存在し続けることは難しい。消滅してしまう可能性がでてくる。できても数日間だけ。悪霊として存在し続けることもできるが結局器がなければ魂の寿命で消滅する。魂は肉体なしでは存在し続けることはできない。創造主がよくやる方法は乗っ取りである。生きている人間に取り憑いて徐々に魂を侵食し中身を完全に入れ替える。また、この時妖力は魂に付与されたままで特殊な魂であるために肉体もやがて変形をしていき創造主の思う容姿へと変貌を遂げて別人へと成り代わる。魂に付与される原妖力の影響で血液も変化し妖血となる。


クロームが死んだタイミングは自分を妖化しようとして失敗した時。この時死を察知したAにより魂を保護されAが他の研究員にクロームの魂を入れ替えた。一度保護としてクロームを取り込んだ時クロームの死の記憶だけを抜き取っている。その後クロームは自分が記録していたものと他の研究員が記録していたものを読み自分の死を悟る。そして自分の体が自分ではないことにも気付く。これに強い好奇心を得てAを研究しようと試みる。しかしAこそ自分に何ができるのかを研究していたため、クロームで試したことができたことで研究所でできることはあらかた終了と見て研究所を去った。クロームは第2のAを生み出す尽力をしたもののそれは達成されなかった。


その後Aはモグラと出会う。モグラから妖力を僅かに感じモグラが妖石を所持していることを察知。しかしこの時モグラは貧しさ故に餓死寸前、そこでAはモグラを助ける選択をとった。クロームを実験がてら助けているのとはまた別の感情で。妖石を入手するだけなら弱っているモグラから奪い取ることは簡単だったわけだからそれ以上の理由が必要だ。Aはクロームで試したように自身でさえもそれが可能であることをなんとなく察している。でもそれが確かなものかというとまだ一度も試していないわけだ。だからといってモグラの体を使ってそれを試すには弱りすぎているし、モグラに会う以前に別の人間を見かけているわけだからその理由ではモグラはAにとって必要性がなかった。Aはモグラに同情をしていたんだと思う。でなければ、その段階で意味がないから。

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