第6話 鳴瀧凱斗

「おっはー!」


 最悪だ・・・・・・。

 なんで、こいつは俺に話しかけてくるのだろうか。

 それがいつも不思議で仕方がなかった。

 

☆☆☆


 人懐っこい笑顔を俺に向けたそいつの名は鳴瀧凱斗なるたきかいと

 茶髪の短髪。

 健康的に焼かれた肌。

 長身でイケメン。

 笑顔が特徴的なクラスの中心人物だ。

 だからなのだ、俺が不思議に思うのは、鳴瀧は俺なんかと話さなくても友達はたくさんいるはず。

 なぜ、俺に話しかけてくる?


「おはよう」

「相変わらず暗いな〜!」


 俺の席の前に立って、鳴瀧は、がはは、と豪快に笑う。

 この距離感も地味に苦手だったりする。

 

「何か用?」

「いや、特に用はない!」

「お前もか・・・・・・」

「ん?」

「いや、こっちの話」

「そうか。ところで、明後日は空いてないか?」

「用があるんじゃねぇか・・・・・・」


 特に予定はないがどうせろくでもないことに誘われるんだろうから、あるということにしておこう。


「空いてないな」

「それは、残念だな。クラスの奴らとカラオケに行く予定だったんだが、よかったら唯川も来ないかなと思ったんだがな。でも、空いてないならしょうがないな。また誘うわ!」


 鳴瀧はまた人懐っこい笑顔を浮かべて、そう言うと友達のところへと戻っていった。


「俺のことなんか気にせずに楽しべばいいのに」

  

 俺は窓の外に目を向けた。

 もうそろそろ冬か。 

 アイスココアからホットココアに切り替える頃だな。

 天谷さんのホットココアもまた絶品なのだ。

 今から飲むのが待ち遠しい。

 

「早く会いたいな・・・・・・」


 早く天谷さんに会って『癒し』をもらいたい。

 あの『癒し』を守るためだったら俺は何でもする。そのくらいの覚悟はある。


「てか、この考え方、1歩間違えれば、俺があの男みたいになっていたかもな」


 天谷さんと友達になれてよかったと、俺は改めて思った。

 この関係は大事にしていきたいな。 

 できれば、俺が高校を卒業するその時まで。

 高校を卒業後は俺は県外の大学に行くつもりだった。おそらく、いや確実に、そうなったら天谷さんとの関係は終わるだろう。

 だから、せめてそれまでは・・・・・・。

 天谷さんと友達でいさせてくれ。

 そう神頼みをしたところで始業を知らせるチャイムが鳴って担任の天谷先生が入ってきた。

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