第2話 怪しい人

 娘が悩みながら生きている事を私は知らなかった。母親として失格だと思う。

 一重ひとしげ家は代々、人智を超えた力を持って生まれて来る者がいる。私自身はそれほど強く覚醒しなかったし、千重を産んでから、その力は跡形もなく鳴りを潜めた。

 だから……、では済まされない。気がついてやるべきだったのだ、私は千重の力を利用した奴らを許さない。



 最近は頭痛が酷いけど、今日は調子が良いので久しぶりに投稿します。この前は人助けをしたなんて書いたけど、そんなに大した事はしてません。転びそうになった子供のショックを柔らげたとか、その程度のことです。


 その程度とか言っても、結構大変なんです。なにせ子供には直接触っていませんから。

 子供が転ぶ衝撃をやわらげる時、私が触っているのは地球です。それも直接触っている訳ではなくて、靴底を挟んで触っているので力が伝わりにくいのです。距離が遠いと更に沢山の力が必要になります。

 クゲンの力は、私の健康のためにも使っちゃいけないと分かって来たけど、ついつい反射で使っちゃいます。みんなも、水の入ったコップが落ちそうになったら、つい手が出ちゃうと思います。それと同じです。


 重力を操れる私が体重計に乗ったらどうなるのか? 年頃の女の子の体重を詮索するなんて失礼だと思います。

 でもいいです。公表します。40kgくらいです。体重計に乗ると、それ以上行って欲しくないっ!って所で無意識に力が働いてしまうらしく、体重計自体の重さや身につけている物の分、体重が軽くなります。それにどうやら、分子レベルで重さを移動させる事が出来るようです。空気にはいつも触っているから、だから私も正確には自分の体重を知らないんです。


 今日は怪しげな人に会いました。その人は森網と名乗りました。サングラスに黒スーツ。

バカな私でも分かる怪しげな出立ちでした。

 水島はそこそこ栄えている場所で、奇抜な格好をしている人も居るには居ます。けれども私も14才、絶対について行ってはダメな人だと判断できました。


 その人はなぜか私の名前を知っていました。「あなたは千重ちゃんだよね? 一重家の。お母さんは……」って、お母さんの事も知っていたけど、怖くて逃げました。


 お母さんに言った方がいいのかな?







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