第4話

前書き


前作では、描かれなかったエピソード。




****************


「何で…何で、魔物の氾濫が起きないのよ!?

私が【聖女】としてする予定だったのに!」




あの方がそんな独り言を言っているのを聴いたのは、偶然でした。




エミール様に早く会いたくて、以前エリー様に教えて頂いた、魔術科練に行く近道を通っていた時でしたわ。




わたくしそっと踵を返してすぐにエミール様のところに行こうとしましたけど、あまりの恐ろしさに足が竦んで動けなくなってしまいました。




「誰!?其処に居るのは?」




き…気付かれてしまいましたわ!

どうしましょう!?




ガサッ

「ニャ~ン」




「何だ、猫か…脅かさないでよ。

あ、次のイベントの時間だわ♪

今度こそクリスに会わなきゃ♡」

そう言ってあの方は、わたくしに気付かずその場を立ち去って行かれました。




「危ないところでしたわ……。

偶然、猫が出て来てくれて助かりました……。」





と、突然背後に気配を感じたので振り向くと、其処には……




「偶然な訳ないでしょう。

危ないところでしたわね、サーラ姉様。」

後ろに居たのは、エリー様の妹のケイト様でした。

いつの間に……





「どうして此処へ?」

不思議に思って尋ねると、

「サーラ姉様が此処に入って行くのが、見えましたので追いかけましたの。

この先の開けた場所が、【猫集会場】ですのよ。」




「【猫集会場】?」

「『最近、此処を荒らす人間がいるから、何とかして欲しい。』と、頼まれまして。

どうやら、荒らしていたのはだったようですね。」




頼まれたってですの?




「ところで、今の話エミール殿下や風紀委員会に報告した方が良いかと思いますけど。」

そうですわ!

惚けている場合じゃありません!




「で、ではわたくしエミール様に報告してまいります!

ケイト様は、風紀委員会の方をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「えぇ、わかりましたわ。」




ケイト様とは其処で別れ、わたくしは急いでエミール様に報告しに行きました。




魔物の氾濫スタンビート】が起こるのを望むなんて…あの方、【聖女】どころか、【悪魔】なのではないでしょうか?




******************




(サーラが立ち去った後)




「シルバー!もういいわよ。

出て来なさい……。」




「ニャ~ン」

ガサガサッ

出て来たのは、立派な黒虎猫だった。




「貴方のおかげで助かりました。

さ、風紀委員会に報告したら帰るわよ。

オマエを飼っているのは内緒なんですから。

ちゃんと大人しくしていて下さいね。」




「ニャ~」

ペロペロ…クシクシ……

呑気に顔を洗うシルバーを抱き上げ、私はその場を立ち去った。




それにしても、『次のイベント』とか『クリスに会わなきゃ』とかどう言う事かしら?

今の話は父様にも知らせた方が、良いですね。

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