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 ――刹那、カエナは自慢の剣を掴み、カイルに目掛けて大きく振りかぶる。彼の動きを合図に、フードを被った長身の一人が、天に向かって右手の人差し指を上げた。謎の古代文字が浮かび上がり、透明なベールが空を覆う。

 カイルは即座に剣を持ち、カエナの攻撃を受け止める。閃光が飛び散り、不吉な風が二人の髪を揺らした。

「ラアラ! シャル!」

「任せて!」

「はいよ!」

 彼は後方の二人に指示を出し、謎の三人組の相手を任せる。先ほど宙を指差した一人は、ふわっと斜め後ろの木の枝に飛び乗ったが、他の二人は動く様子を見せない。何を仕掛けてくるか、全く分からない。

「吹き飛びなさい!!」

 ラアラは不気味なフードたちに杖を向け、火炎の爆発を放った。燃え盛る炎が一気に周囲を明るくし、二人の敵を焼き尽くさんとする。

 

 ――長身は右に素早く避けたが、少年の方の容姿は動かなかった。その代わり、彼は左手を前方に突き出し、透き通った藍色の魔法陣を生み出した。その魔法陣に触れた火炎は、一瞬の内に霧散してしまう。

「防御魔法!?」

 突如現れた高性能なバリアに、驚きを隠せないラアラ。それを横目に、シャルはもう一人の右に回避した方に飛び掛かっていた。獣人の力を解放し、何倍にもなった身体能力で、敵に向かって拳を入れる。

「うにゃ!?」

 ……しかし、彼女の拳は片手で受け止められた。ひしひしと感じる、同族の波長。まさか、このフードの下には、彼女と同じ耳が……。

 

 

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