第15話 5年前の父上の話


「やっぱり気づいていらっしゃらなかったんですね。お疲れになってるようなので本日はゆっくり休むようにと、提案してきたのでわたくしが代わりに了承しておきました」


(………そんなに深く考え込んでいたのか、しかもセバスが来たことが気が付かなかったとは)


「わたくしはもう行きますが、お兄様はゆっくりしていってくださいね」


 そう言うと、アイリーンは去って行った。


(………さて、これからどうしようかなぁ………)


 そもそも夢の中で見た領地が攻められるというのも半信半疑だし、あの時の鉄球が神器だったというのもなんか腑に落ちない。


 色々頭の中を巡らしながら、ふと父上との会話を思い出した。



 ――5年前――


「父上、エッグラース家には神器アーティファクトは無いんですか?」


 ふとハルトは他の領主家には存在するのに我が家だけ神器アーティファクトを見たことが無いので聞いてみることにしたのだ。


「どうも強力な神器アーティファクトの為、普段は封印を施されてるらしい。また、素質が無いものには現れないようだ」


 父上はそうは言うが何か隠してるようだった。


 本当のことかもしれない。だけど、全部伝えてないような気がするのだ。


「あれだハルトよ、そんな顔するのではないぞ。もう少し大きくなればその謎も解けるかもしれん。もしかすると、ハルトが選ばれるかもしれんな! あっはっはっは!」


 ――高らかに笑う父上の姿はいつの日か忘れていたようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る