第9話 包囲される

「防衛線は無理です、早くお逃げください!」


 已む得ず、クラウドの進言を取り入れて逃げることにした。



 …………のだが、どこを間違えたかすでに包囲されており、逃げ道は無かった。



 屋敷の地下に、秘密通路の逃げ道があるから、そちらから逃げることにした。



 クラウドが殿になり、屋敷の前に立つと申し出てくれた。



 本当なら立ち向かうべきなのだが、こちら内政ばかりで、武芸に点で自信が無いんだよな。


「ぐっ!」


 ――しかし、屋敷に入るところを見つかり、一発アイスランスを貰ってしまった。


 流石にクラウドと言えども多勢に無勢。そう長くは持ちこたえられない。



 このまま逃げても血で居場所をばらしてるようなものだ。


 そう思ったので1階の大広間までやってきた。テーブルクロスをアイスランスを貰った個所に巻き付ける。


(………よし、これで大丈夫のはずだ!)


 ハルトは地下室に逃げ、傷が癒されるのを待って逃亡するのだった。




 秘密の入り口に向かう途中に足音が聞こえたから完全に包囲されたとみていいだろう。



 地下室には先祖である勇者の伝説の防具が収められていた。


 故に逃げる前にこれを持ち出さなければいけない、そう考えたので地下室にやってきたのだ。



 不思議な鉄球のようなものが収められていた。


(ここは歴代の武具が収められているはずだが、なんでこんな物が?)


 実はこれこそが先祖代々受け継ぐ神器ではあるが、ハルトには理解できなかった。この鉄球がなぜこんなところに? と思うのだが、全く分からなかったのだ。


 この大層に飾るように置いてあるこの鉄球を取り、左手に収めた。

 今思えばなぜこんなものに惹かれるのか分からないが、無我夢中だった。


 (そうだ! 入り口をふさいで籠城しないと)


 出血してるとはいえ、気持ちを落ち着かせなければいけない。


 ――気持ちが落ち着いたところで、入口を隠蔽するための作業を始めた。

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