第3話 相方始めました

「「おはよー。皆の衆!」」


 あえて、今朝はハイテンションで挨拶をしてみる。


「なんで急にハイテンション?それに皆の衆、とか」


 健人たけひとが、ツッコミを入れてくる。


「まあ、聞いてくれよ。健人も含めて、教室の皆も」

「ちょっと、大事な発表があるんだ!」


 と言いつつ、お互い既に、含み笑いをしている。

 さて、どんな反応が返ってくるか。


「なんだなんだ。ようやく、関係を認める気になったか?」

「ある意味では、そうだな」


 健人たけひとの奴も、皆も、


「往生際悪かったけど、ようやくか」

「なーんだ。やっぱり照れ臭かっただけなんじゃない?」

「でも、そう思うと、可愛いかもー」


 などなど、盛り上がり始めたところ。


「そのだな。俺たちは、今日から相方だ!」

「というわけで、二人揃って、よろしくお願いします!」


 と頭を下げる。


「相方……?」


 健人は、何言ってるの?とばかりの表情。


「ああ、漫才とかであるだろ。コンビ組んでる相手の事、そう言うって」

「私達は、今日からコンビということで、一つよろしくー」


 わざわざ手を振ってみたりする。


「なあ、お前ら、やっぱり往生際悪すぎだろ。なんだよ、相方って」

「ね。別に、ラブラブなんだから、恋人でいいじゃない」

「わけわからないよねー」


 何をこだわっているのやら、と総ツッコミである。

 まあ、実のところ、心の奥底ではわかっているのだ。でも……


「だってなー。恋人以前に、こいつとはソウルフレンドだし」

「そのネタ昨日使ったばっかりだよね?」


 ツッコミを入れる桃。


「というわけで、恋人とは違う関係を模索してたわけだ」


 と内情を暴露する。


「まあ、長い付き合いなんだし、色々あるんだろうが……」


 やっぱり、理解出来ない、とばかりの皆。


「それでも、お友達と主張されるよりはマシか」


 そう諦めたように言った健人はどこか嬉しそうで。

 こいつなりに、俺達の事を心配してくれたんだろうな。

 心の底で、すまん、と謝っておく。


「よし!せっかくだから、今日の放課後はカラオケでも行こうぜ!」

「いや、別に祝ってもらう程じゃ」

「そうそう。そんな大げさなものじゃないよー」


 嬉しいのだけど、少し照れくさい。


「あー、照れてる―。初めて、初々しい様子見た気がするー」

「ねー。これは、是が非でも、馴れ初めから聞かないと!」

「そうそう。大体、いつから付き合ってたんだって話だよねー」


 既に俺たちを弄る気満々らしい。


(しかし、付き合う、ねえ……)


 ちら、と横を見ると、たはは、と乾いた笑いが帰ってきた。

 だよな。


(気がついたら、今までの延長線上で、色々してたけど)


 そもそも、付き合う、付き合わないの境界線が明確になかった。

 

(放課後、さらにツッコミいっぱい食らいそうだよね)

(なんだか、少し憂鬱になってきた)


 あ、そういえば。


「あ、そうそう。コンビ名は『和樹かずきもも』だから」

「「「相方って、本気だったのかよ!!!」」」


 案の定、総ツッコミが来たのだった。

 ノリがいい奴が多くて、なにより。

 

(これからも、よろしくな。桃)

(こちらこそ。カズちゃん)


 なんて言い合って笑いあった俺たちだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺と幼馴染は付き合っていないけど、仲良過ぎ、と誰も信じてくれない件 久野真一 @kuno1234

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ