第22話妹の勉強は難行?

「と、まあ、つまり地中海世界では古代ギリシャ哲学とキリスト教が起こり、それをマケドニア率いるアレキサンダー大王とローマ帝国がそれらを結合させたと言うことを覚えておくといいよ」

 それにビシッ!と美亜が指をさした。

「最初っからそう言って!」

「はは、ごめんごめん」

 俺は頭を下げた。そして言う。

「ちょっと詳しく言った方がさ、大体の流れが理解できるんじゃないかと思って概略を話したんだけど、美亜にはちょっと難しかったかな?」

 それに美亜はブンブンと腕を振り回す。

「難しいも何も宇宙語だったよ!」


「はは、ごめん。じゃあ、気を取り直してまず古代エジプトから話そうか。テストまで3日後か?」

 それにコクコクと美亜は頷く(うなずく)。


「大体中学レベルの話をするぞ、まず、古代エジプト。大まかに言って時代区分はなんに分けられる?」

 それに美亜は固まった。

「え?」

 これは美亜。

「え?」

 これは俺。


「いや、初歩中の初歩だから。古代エジプトの時代区分はなんと定義されている?」


「えー。私が知っているのは古代エジプトの王はファラオということナイル川の賜物、しか知らないんだけど」

「いや・・・・・・・・」

これは結構な難行(なんぎょう)になりそうだな。




 キーンコーンカーンコーン。

「じゃ、授業はおしまい。ちゃんと休むのよ」

 はーい、という声を背中に受けて岡先生は去って行った。

 岡先生、出産してからだいぶ体がふくよかになったな。まあ、健康の証だからいいけど。


 一部では学園のマドンナ的存在である岡先生のそんな変化に嘆き悲しむ声があるとかないとか。

 俺は弁当を開けてさっさと食べようとした時、あたりが暗くなった。


 見ると仁が俺の眼前に立っていた。

「一緒に食べないのか?」

 仁の表情は冷たくも熱くもなく至って平静な表情をしていた。


 しかし、あまりに感情の薄いその平静さが逆に俺の心を不安にさせた。

「ああ、昼食後。妹のためにノート作らないといけないから一緒におしゃべりする時間はない」

 仁の表情に色が出た。それは水彩絵の具の黒色の表情だった。


「本気なのか?」

「本気だとも」

 内心は心臓がばくばくなっていたが平成な様子で答えた。

 仁を怒らせたくない気持ちがある一方で、なんで妹の手助けをすることに対してとやかく言われなければならないんだ、という反発芯があった。

 仁は唇を噛み締める(かみしめる)。


「妹なんて・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

 それからスッと仁は離れて、神崎さんたちの方へ行った。

 是枝と神崎さんが心配げにこちらを見ている。しかし、俺はあえてそれを無視し、弁当をガツガツ食べて、ノートを広げた。

「さて、やるか」

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