第11話 カラオケ
「では、以上かな。解散するぞ。バイトをしている人も多くいると思うけど、まだ、暑いからな体調には気をつけてな。それでは解散!」
担任の先生が出て行くと俺は仁のところに行った。
「仁」
仁の猿のような顔が振り向く。
「今日はバイトはなしか?」
それに仁は頷く(うなずく)。
「ああ」
「じゃあ・・・・・」
「でも、今日は夕菜とのデートだ。なかなかバイトで忙し(いそがし)かったから、ちょくちょくデートしないと」
「それなんだけどさ」
「うん?」
仁が不思議そうにうなずいた。
「是枝も誘ってさ、4人でカラオケやボーリングに行かないか?毎度バイトと勉強ばかりも疲れると思うし、どうかな?」
それに仁が考え込んだ表情をした。
「それはいいかもしれない。ちょっと、夕菜に声をかけてみる」
そして、いそいそと仁はスマホを取り出した。
俺は是枝の方に向かう。
是枝は、仲良しの女友達と仲良くお喋り(おしゃべり)をしていた。
「是枝」
是枝が振り向く。
「なあ、是枝、今日は暇か?」
それに是枝が困惑(こんわく)した風に首を横にふった。
「いや、今日は友達と・・・・・・・・」
しかし・・・・・
「皐月」
是枝の女友達が是枝に笑顔を見せた。
「行ってきな」
それに是枝も頷く(うなずく)。
「あ、うん」
そんな是枝に俺は説明をする。
「実はさ、俺と仁と神崎さんでカラオケとかボーリングとかパーッと遊べるものをやろうかって話なんだけど、是枝も来る?」
「う、うん」
それに是枝もたじろぐようにうなずいた。
「どうした?なんか、らしくないぞ?」
「うるさいなぁ。こういう日もあるの!いきなりのことでびっくりしたのよ。女の子は繊細なんだから、そこら辺を理解しないとモテないぞ!」
「そうか、悪かった」
俺はボリボリ頭をかいた。
「おーい」
仁がやってきた。
「夕菜もOKだってさ。どこ行く?」
それに是枝が目を輝かせた。
「私、カラオケがいい!あんまりみんなとカラオケ行ってないしね。みんながどんなものを歌うのか気になる!」
それに俺もうなずいた。
「俺も同感。カラオケがいいと思うな。まあ、神崎さんの意見も尊重するけど」
「そうだね」
「そうだな。とりあえず合流して決めるか」
しかし、神崎さんもカラオケがいいとのことだったので、俺たちはカラオケに行くことにした。
「さて、誰から歌う?」
「そう言いつつ、最初に曲を入れたのはお前だろ?」
俺は是枝を見る。それに是枝はぺろっと舌を出す。
「だって、時間がもったいないんだもーん」
「やれやれ」
そう言いつつも是枝が選んだのは今はやりのj-popだった。
そういえば美亜もこの歌手好きだったな。二人して好きな音楽のジャンルを聞いたことがあるが、俺たちはどちらとも相手の曲をありえない、と言っていたっけ?
是枝の歌はまずまずだった。まあ、俺たちはバイトで忙しいから、そんなにカラオケに行けれないのだ。
そして、是枝が終わって次は神崎さんの番だ。
「ガンバ!夕菜ちゃん!」
それに神崎さんが楚々(そそ)と頷く(うなずく)。女子に対しても控えめな行動を取るから、学園の人気者なんだろうな。神崎さんは。
神崎さんは2000年代に流行ったアニソン歌手の歌を歌っていた。短調の曲でも彼女は完璧に歌った。
「へー。夕菜さん。レイさんの曲を歌うんだ」
それに彼女は体を縮こませる。
「はい。おかしいですか?」
「全然!」
それで、次は仁の番か。
仁はマイナーなアニソン歌手の『the infinity』の曲を歌った。
この歌手、二人組のバンドだが、相当癖の強い曲調と歌声をしていて聴く人を選んでしまうんだよな。まあ、俺はわりかし好きだけど。
そして、それが終わった。
パチパチ。
「相変わらず、マイナーのものを聞くわね」
「ほっとけ」
「ほれ仁」
俺は仁にマイクを渡す。次の曲のためだ。
「ああ」
次の曲はモーツァルトの『フィガロの結婚』だ。
それに是枝が目ざとい表情をする。
「あれ〜?いいのかな?彼女より先に男とドュエットしてさ」
「ほっとけ。後で、夕菜とはたくさん歌うから」
仁は神崎さんの方に目を向けた。
「な?夕菜?」
「はい」
神崎さんはあくまで縮こまったまま返事をした。
うーん。普通就職科の方がバイトをしていて、なかなか遊べてないのに、神崎さんは場慣れしてないな。ひょっとして、普段は勉強ばかりしているのか?しかし、その割にさっきのカラオケはうまかったな。
ちらりと神崎さんを見る。神崎さ相変わらずアップアップしていた。
ヒトカラをしているのか?
まあ、それは置いといて、曲が始まったので二人してモーツァルトの『フィガロの結婚』を歌った。
神崎さんについて深く考えるとわからないところもあったが、考えてもわからなかったし、何より今の時間を十分に過ごすことに注意した。
そして、カラオケ会も終わり、陽がほとんど傾いて(かたむいて)いるなか解散ということになった。
「みんなありがとう!楽しかったよ!」
「こちらこそ」
仁も神崎さんもうなずいている。
「しかし・・・・・・」
是枝は俺に向かって言った。
「やっぱり、藤木の選曲ってクラシックばかりよね。芸がないというか。もうちょっと他のを聞いたら?」
「余計なお世話だ。それに」
是枝が不思議そうな表情をする。
「それに?」
「クラシック音楽は図書館で借りられるからな」
「あ」
是枝と神崎さんが固まった。
「ごめんなさい」
是枝が素直に頭を下げてくる。
「いいよ。気にしてないから」
「そうだ、俺たちはビンボーだから余計な心配するんじゃないよ」
「うん。そうだったね」
そう言った後、是枝さんは神崎さんに話しかけていた。どうやら、神崎さんが歌った曲で是枝が気に入った曲があったようだ。
俺はみんなに言った。
「じゃあ、今日はこれでお別れだ。みんなありがとう」
「こちらこそ」
「気をつけて」
「また、明日な」
「ああ」
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