第9話是枝と恋バナ
今朝も美亜に起こされて学校に向かった。
美亜はああ見えて朝が強く、俺は逆に朝は弱かった。だから、いつも美亜には感謝をしている。
「お?」
登校時、髪を片側に結んで垂らす(たらす)、特徴的なあのポニーテールは・・・・・・・・・
「よ、是枝」
俺はクラス位置に優等生に挨拶をした。
是枝も振り返って齧歯類(げっしるい)の笑みを見せた。
「おはよう」
「うん、おはよう」
それから、自然にふたりして歩く。是枝とはそんなに仲が良くない。教室にいる時は話すけど、その程度。だいたい、是枝の家計もそんなに良くはなく、放課後になるといつもバイトをしているのだ。
「今日は早かったね」
「ああ、お弁当の当番じゃなかったから」
それに是枝は驚く。
「藤木くん、お弁当作るの!?」
「時々な。昨日はそれで遅かった」
それに是枝も深々(ふかぶか)と頷く(うなずく)。
「そうだよね。貧窮者(ひんきゅうしゃ)家庭は大変だよね」
チラッと是枝を見る。こうしてそばで見るとなかなかの美人だ、是枝は。利発そうな目と細い睫毛、小さな鼻。それでいて愛嬌(あいきょう)を感じられるそこそこ広い唇。やっぱりなかなかの美人だな、是枝は。
「ちょっとした話をしていい?是枝。世間話じゃないんだけど」
是枝は伺い(うかがい)見るような目で俺を見た。
「いいよ」
「俺、ちょっと悩んでいるんだ。俺自身は今は幸せだけどさ、彼女ができそうにないんだよね。正直言って。
本当は彼女作りたいんだけど、日々の家事だったり労働だったり、勉強だったりで忙しくて作れそうにないんだ。是枝はバイトとか忙しいと思うけど、彼氏は作れる気はする?」
それに是枝は岩の表情をした。
「私は・・・・・・・」
「うん」
「わかんない」
それに俺が破顔する。
「そりゃ、そうだ。誰にでもわかんないよな!そう言うの」
「でも」
是枝は言の葉(ことのは)を継なぐ(つなぐ)。
「うん」
「藤木くんだったら彼女できるよ」
それに俺は苦笑する。
「なんだ?また女子特有の気休めか?」
それに是枝は慌てる(あわてる)。
「そんなんじゃない!そんなんじゃない!」
俺たちは教室を入ると、俺の席に行き是枝もついてきた。
「ただ、勉強も仕事も家事も頑張っている(がんばっている)、藤木くんを見ている人はきっといるよ」
「そうか」
そしたら是枝と仲の良い女子生徒がやってきたので、是枝はそっちの方に向かった。
「是枝」
是枝が振り向く。
「サンキューな。気遣って(きづかって)くれて」
それに是枝ははにかんだ。
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